第238話 人質
成田は地面ギリギリを浮き続ける。
青色の魔法陣は地面を切り裂きながら成田を追いかけていく。
美咲は青色の魔法陣を消した。
「……消費する魔力が大きい様だな?」
「……」
何も答えない美咲は成田は余裕の表情で地面に足をつける。
それと同時に成田は能力を発動させる。
美咲の後ろを居た愛花、長谷川、ナギサ、ナギアの四人は浮遊していく。
その瞬間美咲は振り返り、理解する。成田によって全員が連れていかれる事を。
美咲は行動を開始する。
「良いのか?」
成田のその一言に美咲の動きは止まる。
「魔力が少ないのに、無駄に使う事は避けるべきだろう?」
美咲は何も言い返す事も出来ず、成田の周りに上下左右に浮遊している人質とも取れる状況に戸惑う。
「強いが、経験が足りねぇ。弱者を守りながら、殺るなら魔力管理はしっかりとしないとな?」
成田の能力を解除する術を美咲は持っているが一度に全員を救う事は出来ない。そんな状況で美咲はここが病院だと言う事を思い出す。
「ここは病院。人なんて浮かせていたら目立つんじゃない?」
「目立つな?だから?止めろって?悪いがそれは止める理由にはならねぇよ」
美咲は険しい表情で成田を見つめる。
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「美咲が心配だ」
「うるせ」
「何だと?」
「いきなりどうした?」
「電話が……」
それは隠れ家から出る為美咲が兄の大地に電話した所から始まる。
「だったら、向かうか?」
「あぁ、直ぐに行くぞ」
大地は地面方位の能力で地面に触れている美咲を確認すると走り出す。そんな大地に続く様にして京も走り出す。
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病院の片隅で四人の人質を取った成田はその一人、ナギサに近づく。
「お前が死ぬ前に俺がお前の能力で覚醒まで導いて貰いたいと思ったんだが、俺以外を覚醒させるし、必要も無くなった癖にみっとも無く、生きやがて」
「それにしては随分と焦っている様だけど」
「この状況、分かっているだろ?全員を助けたければ……俺の重力操作を覚醒させろ。お前の神の頭脳があれば出来るだろう?」
ナギサは暫く考え込むと、行動に移す。
ナギサは自身の頭上に光輝く脳を出現させる。
「待っていた。この瞬間を……」
成田は狂気染みた笑みでナギサの行動を待つ。
成田の頭上からも光輝く脳が出現する。
ナギサの頭上にある光輝く脳から光輝く糸状のものが成田の頭上の光輝く脳を目指し、動いていく。