第233話 電光石火(ライジング・スピード)
「僕も戦うよ」
「はぁ?」
少年のその一言に愛花は思わず、声を漏らす。
それと同時に愛花は隣に居る少年に強い警戒心を持つ。
今日会ったばかりの少年が愛花を助ける理由が無いからだ。
「必要無い。信用出来ないから」
「……けど、このまま、見過ごす事も出来ないよ」
「何で?」
「何でって。困って居る人が居たら助けるだろう?普通」
「……それでも信用できない」
「じゃあ、僕個人で戦わせて貰うよ」
「そう。勝手にすれば」
「そうさせて貰うよ。僕の名前は長谷川翼。電光石火の能力だよ。よろしくね。中鏡愛花」
「私の事知ってるの?」
「北海道支部の有名人として認識しているよ」
「……そう。なら、私の説明は要らないわね」
「うん。大丈夫だよ。あの男が動き出しそうだからね」
長谷川は目の前に居る男の動きから此方への何らかの攻撃が来る事を話ながら愛花に伝える。
長谷川はその言葉と同時に男は一瞬で姿を消す。
「やっぱり、移動系統の能力、異能か?」
長谷川は男が一瞬で姿を消す瞬間を見るのは二度目だ。
戸惑う長谷川に愛花は告げる。
「あの男の能力は空間移動。どこから出てくるか分からない」
「空間移動?。能力か。瞬間移動とは違い、出てきた所を狙い撃ちも出来ないね」
「電光石火ってどんなの?」
「簡単に言えば、もの凄く早く動けるって所かな。それでここまで来たんだ」
「成る程、どうりで早い訳ね。協力してくれるのよね?」
「僕に出来る事が有るのなら」
「あの男は毎回私の背後から攻撃を仕掛けてくる。貴方の能力で男が出てきたら拘束して」
「けど、移動系統の能力なら、僕自身を移動させられる可能性もあるよ」
「それは出来ない。出来るなら、男自身が空間に逃げる必要がない」
「そうか。確かに僕たちを空間に移動させたほうが早い。空間移動にはそんな弱点が」
「弱点ね。けど、ここで倒れている全員は空間移動によって、移動させられたみたいだけど」
「……限定条件があるのかも。例えば、生死とか?」
「あの男は生きているみたいだけど……多分、あの男が持つ空間は不安定なのかも」
「不安定?」
「そう。だからこそ、その空間で暴れる事が出来る私達は空間に移動させないのかも」
「魔法の空間魔法もそうなのかい?」
長谷川は魔法を使う事が出来る愛花に尋ねる。
「魔法の空間魔法は魔力によって、そのスペースと、重量が変化する」
「……あの男の能力も何らかの上限があるみたいだね」
「それは、間違いないと思う」
「……私に考えがある」
「……分かった。従うよ」
長谷川は何の躊躇いもなく答える。