第232話魔法の球体(マジック・スフィア)
愛花は目の前に居る男は魔法固定砲台に強く警戒し、その対処に全くの無駄が無い。そんな姿を見て、愛花は自身の右手の魔法陣と宙に浮かんでいる魔法陣を消す。魔法陣の維持にも魔力を消費する為、愛花は何の迷いも無く、消す。そして、愛花は圧縮した魔力の塊を無数に宙に浮かせる。
それを目にした男は驚きの表情のまま動かなかった。
「魔法の球体上級魔法の一つをこんなガキが……嫌、魔法固定砲台の魔法陣が無いだけか?」
「……魔法固定砲台よりも威力は劣るけど、貴方みたいなタイプには魔法の球体が一番効果的」
魔力を圧縮して止めておく、魔法の球体は高度な魔法として一般常識として理解されている程の難しさを誇り、使うものも年々減ってきている。しかし、愛花にとっては魔法陣があるか無いかの違いしか無いため、大した問題では無い。
魔法固定砲台と違って魔法の球体は手数と移動が出来る為、愛花は攻撃は魔法固定砲台、それ以外を魔法の球体で対応出来る様にしていた。魔法固定砲台は魔法陣を出現させるため、攻撃方向を悟られてしまう為、愛花は魔法固定砲台から魔法の球体に切り替えた。
「……成田の野郎、こんな強い奴何て一言を」
男は愛花の魔法を目にして弱気な発言を漏らす。
「やっと見つけたよ」
愛花は背後から聞こえたその声に反応する様に振り向く。
そこに居たのはふらつく愛花に声をかけてきた少年だった。
「……何の用?」
「……一応、助けに来たんだけど」
「必要無い」
愛花のその言葉に少年は困った表情で笑う。
少年は辺りに倒れる無数の遺体に気がつく。
「大丈夫ですか?」
少年は近くに倒れていた遺体に話しかける。
「無駄よ。全員、死んでるから」
愛花のその一言に少年は戸惑う。
「……君はいつもこんな戦場で戦っているのか?」
「いつもやっていたら、私はとっくに死んでいるわ。全てはドレア・ドレスに負けたあの時から、狂いだした」
少年は北海道支部で起きた事件の事を思い出していた。
「そうか。君はドレア・ドレスの幻覚で……」
愛花は何も答えない。ドレア・ドレスとの戦いは愛花にとっては忘れたい過去の話だ。
「悪いが、少年。これ以上関わるとお前を殺すぞ」
男の殺気に少年はこれがただの手あせてでは無く、殺し合いをしていると直ぐに理解する。
少年は愛花の隣に立つ。