第219話 舞と優菜
「始めましょうか?」
「……うん」
舞は辺り一面に降り続けていた桜を全て消す。
優菜は舞の行動を理解出来ずに居た。
「紅桜によって造られた桜はかなり重要な役割をしてたみたいだけど。消して良かったの?」
「良いよ。傷つく所なんて見たく無いから」
「……レプリカでも?」
「うん」
舞は何の迷いも無く答える。そんな舞を見て優菜は昔のまま、何も変わっていない舞を見て、懐かしい記憶を思い出していた。
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「相変わらず、強いね」
「舞もいつも以上に力が入っていたわね」
川上道場で胴着を着て戦い終えた優菜と舞は楽しげに話をしていた。
この戦いは優菜が勝利したが、それは今日に限った事ではなかった。
いつも舞は負けていた。
優菜と舞の間に廉は割って入ってくる。
「なんだ。また、負けたのか?」
「もう、うるさい」
負けた舞をからかい続ける廉に優菜は竹刀を差し出す。
「じゃ、次私とやろうか?」
「……どうしようかな」
優菜に手合わせを迫られ廉は勢いを失くす。
「どうしたの?廉。やらないの?」
舞は廉に分かりやすく挑発をする。
「上等だ。見てろ」
廉は優菜から竹刀を受け取り、優菜との手合わせに望む。
「……今日はこの位にしといてやるよ」
「私はまだ続けても良いよ」
「嫌、女を傷つける訳にはいかない」
「……一度も触れられなかったのに?」
「その気になれば触れられたよ。明日本気でやってやるよ」
廉は逃げる様にしてその場から離脱する。
「アハハ」
「笑うなんて」
「だって廉……」
「舞よりも剣術が苦手の様ね」
「廉なら私でも勝てるよ」
「どうかしら。廉の成長はこの道場でも一番よ」
「えっ?廉が?」
「そう廉が」
「でも最初は私だから」
「……最初?」
「うん。優菜を倒すのは」
「……そう。待ってるわ……その時を」
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今の二人はあの頃の二人では無い。
舞は走り出す。
優菜も走り出す。
舞の紅桜、優菜の魔剣ディアブロ、妖刀秋雨がぶつかり合う。
優菜の持つ剣は舞によって破壊された。完全模倣によって造られた剣は破壊と同時に消えていく。
「……私の負けね」
優菜は自身の敗北を認める。
「亮太良いのか?」
「完全模倣で造れるのは優菜自身と川上舞だけだ。あの剣(紅桜)が造れたら優菜が勝てただろう。……まぁ良い。後は俺がやってやる」
体育教師は腕時計を確認する。
「この勝負。勝者は川上舞。最後の戦いは明日やって貰う」