第218話 声援
「舞。さっさと勝ちやがれ」
廉は彩美声援を聞いて、自身も声援を送る事にした。
隣で廉が舞に声援を送るのを聞いて彩美は対抗心を燃やす。
「私一人で十分。舞そんな奴倒しちゃえ」
二人の応援合戦の様になって居るなか優菜は一人呟く。
「そんな奴……ね。面白い事言うわね。雷切姫。それで貴女は仲間の声援に答えるの?それとも……」
優菜は半分以上桜色を取り戻した桜の花びらを見つめていた。
「舞、頑張って」
紫音はいがみ合っている廉と彩美をよそに舞に声援を送る。
「あんたまで、私とやるつもり?」
「嫌、そんなつもりは……」
彩美は廉とのいがみ合いを止め、紫音を威圧する。
「舞」
「ちょっと」
廉は彩美の静止が無いため舞の応援をすると同時に直ぐ様、彩美は廉の応援を止めに入る。
「なんだよ?」
「だから、応援は私一人十分」
「嫌、不十分だ」
「なんだと?」
彩美は廉に近づく。
「不十分だろ。俺一人でも、紫音一人でも、お前一人でも。だから全員で応援するんだ。俺達はチームなんだから」
「……そう。……好きにすれば」
チーム[アブノーマル]全員で応援を始めようとした時、紫音は目の前の状況を廉と彩美に伝える。
「もう大丈夫みたいだ」
二人は紫音が言った事を直ぐには理解出来ず、紫音の目線の先である方向を見つめる。
その光景に廉はどこか誇らしげに、彩美は嬉しいそうにしていた。
その光景は優菜も見ていた。
舞を中心に桜吹雪が止むこと無く、降り注いでいた。
舞はとにかく笑顔で、髪は風になびき、東京本部の制服に身を包んでいる舞のスカートは止まる事なく揺れ続けていた。
対戦相手である優菜は笑みを溢す。
「それが貴女の全力」
「違うよ。これからだよ」
「そう。それは楽しみね」
優菜のその言葉を最後に二人は走り出す。
優菜が舞散る桜に触れた瞬間に優菜は弾き飛ばされる。
「……なるほど、その桜は防御壁って事ね」
弾き飛ばされた優菜は直ぐに理解した。
それにも関わらず優菜は走り出す。
桜に触れた優菜は吹き飛ばされた。しかし、その優菜はレプリカだった。
優菜は自身のレプリカを無数に造り出すと桜にその体を当て続けてた。
何度倒れても、起き上がりまた桜にぶつかりに行く。これを何度も繰り返していた。そんな光景を見ていた舞は唯一動かないオリジナルの優菜を見つめる。優菜は自身に満ち溢れた表情で立ち尽くしていた。
そんな優菜を見て舞は警戒を強める。
しばらくたった頃オリジナルの優菜は走り出す。
オリジナルの優菜は桜に触れる事なく、舞の元にやって来た。
レプリカの優菜はオリジナルの優菜が桜に当たらない様に身代わりにしていた。