第209話 獣神の体
動物の個性を引き出す事が出来る大河にどの様に対処するか紫音は頭を悩ませる。視力も聴力も脚力も腕力も普通の人間とは異なる。
そんな人間との戦い方を知る訳も無い紫音は距離を取る事にした。
大河が言う様に大河の後に控える二人はかなりの実力者である事は紫音は理解出来ている。その為、この戦いは紫音にとって、負けられない勝負である。紫音は氷で出来た大樹も三つ造り出す。
三つかさなった大樹は隙間は無く、時間稼ぎをするなら十分な程だ。
大河が氷で出来た大樹を破壊するべく拳を振るう。
氷神の花畑。
佐倉紫音の異能力だ。
氷を造れるのは勿論、全てが植物の形になるが威力は凄まじいものになる。
現在、氷で造られてた大樹は紫音が出せる最大の大きさを誇る。
この大きさなら動物のジャンプ力でも無理だろう。
「手詰まりね」
紫音と大河の戦いを遠くで見ていたチーム[ドラゴノイド]は紫音の出した巨大な氷で造られてた大樹の出現に優菜は隣に居る亮太に告げる。
「……嫌、ここからだ」
「……ここから?」
「あの二人は神能力と神異能力も持つものだ」
「……その口振りからして神能力、神異能力について詳しいのかしら?」
「通常の人間とは違う……位か」
「どのレベルで違うのかしら?」
「……説明は出来ねぇ。だが、神は特別なステージに立つ事が許される。荒川玲愛の様に……俺もいずれ……」
「……私には分からない事ね」
優菜は諦めた様に笑うと戦いを繰り広げている大河と紫音を見つめる。
未だに紫音が造った氷の大樹の上を見つめる大河。
大河の背中からは大きな翼が生えてくる。
「何だ……あれ?」
遠く離れた場所から戦いを見守って居た廉は思わず声を出す。
その翼は動物のものとは思えない。
「……まるで恐竜みたい」
「確かに」
舞の一言に彩美は相づちを打つ。
そんな二人のやり取りを聞いていた廉は大河が生やした翼が普通の動物で無いことを理解する。
大河は大きな翼をはためかせる。
大河は緩やかに飛行を開始させる。
その姿は紫音は確認出来ずに居た。
紫音が大河の姿を確認出来たのは氷で出来た大樹を越えてやって来た時だった。
大河は急降下をして紫音との距離を縮める。
紫音は氷で造った花びらを大河に向けて放つ。
氷の花びらに当たった大河は血を流す。
大河は直ぐ様、皮膚の硬化を始める。これにより、氷で出来た花びらに当たた瞬間に氷は砕ける。
「これで終わりだよ」
大河はその言葉を告げると詩音に手を伸ばす。