第208話 獣神変化(ビースト・チェンジ)
廉は紫音に第一試合に向かう事を了承する。
「それでは、第一試合。野島大河対佐倉紫音の試合を始める」
紫音は目の前に居る男を見つめる。
「試合……開始」
大河と紫音は全く動かない。
相手の出方を伺っているのもあるが、紫音はチーム[ドラゴノイド]について考えていた。
「……この戦いの結果は勝利には影響を与えないと思うんだよね」
大河は試合が始まっているが、地面に座る。
その姿は隙だらけに見えてくる。
隙を見せる大河に対して紫音は何もしない。ただそんな大河を見つめていた。
「どうゆう意味?」
「後に控えている二人には君のチームメイトでは勝てないよ」
「やって見ないと分からないよ」
「無理だよ。優菜の能力は完全模倣生物、物体等目で見ただけで造ってしまう能力だ。控えている二人は武器を造り出す異能力だと聞いたよ。つまり優菜は全く同じ武器を造れてしまう。そして、リーダーの田中亮太。半神半竜の神能力者。亮太には勝てないよ」
「君が何を言おうと関係無い。僕たちは勝つために戦う」
「それはこちらも同じ」
大河は起き上がる。
それは戦う為に立ち上がった事を意味していた。
紫音は異能を発動させる。
氷で出来た棘の鞭を手にする。
鞭からは冷気が出ている。
そんな紫音に対して大河は動かない。
紫音は手にしている鞭を振るう。
鞭は大河を縛り上げる。
鞭は氷とは言え、棘がありトゲが食い込んでいる。
しかし、大河は顔色が変わる事は無い。
大河は軽く動く。それだけで氷で出来た鞭を破壊する。
氷で造られている為、簡単に壊れてしまうがそれでも強度はある方だ。
(……身体強化系の能力か?)
目の前に居るのは能力クラスの生徒だ。その為、紫音は大河が身体強化系の能力と推測する。
大河は走り出す。その早さは人間の早さを超えている。
紫音は地面に手を触れる。
地面からは氷の棘が無数に出現する。
無数に棘は大河が走る道を塞ぐ。
大河は拳を振るう。地面から出てきた棘は大河が振るった拳によって粉砕する。
「神異能力だとして氷は氷。俺の獣神変化なら簡単に破壊出来そうだ」
「獣神変化?」
紫音は聞き覚えの無い能力を声に出していた。
「獣神変化は俺の体を動物の体に変える事が出来る能力だ。全身も出来るし、一部も出来る。例えば視力の良い動物の目に変えたり、耳の良い動物の耳する事も出来る」