第207話 アンティルール
「良いよ。私達は負けないから」
廉と紫音の背後から舞は告げる。
舞のその発言を聞いて黒い学ランを着た男は笑みを溢す。
「良い覚悟だ。男よりも……なぁ。戦いを楽しみにしてるぞ」
黒い学ラン服の男はその場を後にする。
「舞、お前なぁ」
「まあまあ、勝てば良いんだよ」
怒りを露にする廉に対して舞は適当になだめる。
舞のその様子は緊張を感じさせない。
舞は彩美と共にチーム対抗戦が行われるグランドに向かい歩いていく。
舞と彩美を追いかける様に歩く廉と紫音は舞を見つめる。
「……舞、思ったよりも大丈夫そうだね」
「……あぁ」
紫音のその言葉に廉は何も考える事も無く相づちを打つ。
北海道支部で舞はドレア・ドレスと戦い紅桜を使用したと聞いていた廉は過去に紅桜を使用して暴走した舞の姿を思い出していた。
チーム[アブノーマル]は舞の妖魔剣創造を使わせない、使わなくても良いようにと廉が考え、造られたチームだ。
廉はチーム[アブノーマル]の在り方について考えていた。
「良い。あんなチームに負ける事は許さない」
彩美は廉に顔を近づけ、脅迫と言っても間違えの無い様に告げる。
そんな、脅迫じみた発言を聞かされた廉は彩美に圧倒される。
「うん。頑張るよ」
廉は引きつった表情で答える。
今回のチーム対抗戦は彩美は参加出来ない。
現在はチーム参加申請中の為、彩美は見守る事しか出来ない。
「あの三人がチーム[ドラゴノイド]」
少し離れた距離に居る三人を見て、廉は呟く。
「チーム[ドラゴノイド]?」
廉の呟くを隣で聞いていた紫音は廉に確かめる様に聞く。
「あぁ、リーダーがそう言ってたぞ」
「チーム[ドラゴノイド]は大阪で荒川玲愛によって……」
「……紫音?」
「嫌、何でもないよ」
紫音はチーム[ドラゴノイド]を見つめ、考え込む。
舞の母親川上玲奈から聞いた話では大阪に居た男がチーム[ドラゴノイド]を名乗り、荒川玲愛によって殺されたと聞いていた。
紫音は目の前に居るチーム[ドラゴノイド]を見つめる。
坂田優菜は川上道場に通って居た過去を持ち、廉と舞とも知り合いだ。
優菜がチーム[ドラゴノイド]の名前を付けたとは考えにくい。
付けるとしたら二人の男のどちらかだ。
「それでは、試合を始める。参加者は両チーム三人。一人目前へ」
体育教師は大きな声で両チームに聞こえる様に話す。
「どうする?」
廉は紫音と舞に確認を取る。
「僕が行くよ」
「良いのか?紫音」
「うん。行ってくるよ」
「頼む」