第204話 戻ってきた二人
光を当てられた二人の顔色は次第に良くなっていく。
「凄いな」
大地は思わず声を出す。
大勢の大人が治せなかった二人を一瞬で子供であるナギサが治すなんて大地は半信半疑だった。しかし、二人の様子から幻術は解けたようにも感じる。
ナギサによって脳が改変され、幻術が解かれる。
「これで終わりだよ」
「本当か?」
大地は土下座を止め、美咲の様子を確認する。
目は開けていないが、顔色は大分良い。そんな美咲を見て、大地は安堵の笑みを溢す。
「世界の全ての脳を管理すると言われている神の頭脳は神の人体シリーズの一つだと聞いていますが……」
「そうだよ」
「では……」
「神の人体シリーズは数世紀前から管理する神で管理するか殺すかのどちからだったみたいだね」
「既に神の手を持つ荒川玲愛は管理下にいるみたいですが……」
「私は自由に生きてみたい。京と居れば出来そうな気がするの」
「そうですか……」
ナギアはこれ以上の質問はする事はない。
ただ、ナギサと京を見つめるだけだ。
ナギア持つ情報ではナギサは死を受け入れていたとなっているが、現在は生きる為に動く。そんな、ナギサをナギアは不思議そうな表情で見つめる。
「……お兄ちゃん?」
「美咲?」
美咲はゆっくりと体を起こす。
「……北海道はどうなったの?」
「……」
美咲の質問に大地は言葉を詰まらせる。
大地の知っていることは、ドレア・ドレスが幻術で北海道支部とその外の全てを覆って、全ての人間を幻術にかけた事だけだった。
しかし、それは美咲も知っている事だろう。
「北海道の人達は医療機関で治療を受けています。建物等の損壊も酷い様ですが、順調に復興されているそうです」
「……貴女は?」
大地の隣に居たナギアからの北海道の状況を理解した美咲は始めてみるナギアの存在に興味を持つ。子供にしては妙に大人しく、凛とした佇まいが特徴で美咲の興味を強く引き付ける。
「私はナギアです」
「ナギアちゃん……よろしくね」
「……はい」
ナギアは戸惑いながらも返事をする。
「愛花、大丈夫?」
「……うん」
無言で起き上がる愛花を見て美咲は心配そうに気遣う。
愛花は頭を抱え、だるそうだ。
「あいつ、まだ幻術にかかっているのか?」
遠くに居る京は愛花の様子を見ている隣に居るナギサに聞いていた。
「幻術は解いたよ。間違いなく」
「……その割には具合が悪そうだが?」
「……幻術以外にも色々な可能性があるよ」
「……何だそれ?」
「例えば……トラウマとか」