第202話 ナギア
大地は目の前に居る人造人間と語る少女に戸惑う。
目の前に居る少女は先程出会った京の隣に居たナギサに瓜二つだ。
少し、声が違う様に感じるがそれ以外は全て全て同じに見える。
しかし、大地にとっては妹を治してくれるなら誰でも良い。
「幻術の解き方を知っているなら教えくれ」
「知識としては知っていますが、オリジナルなら治療も出来ますよ」
「そうなのか?」
「はい。オリジナルは知識だけで無く、相手の脳に直接知識を送る事が出来ます。幻術は五感を支配する事で効果持続させるものです。まだ目を覚まさないのは強すぎる幻術が体から抜ききれていない事を意味しています。オリジナルなら脳の情報を書き換え、五感を元に戻す事が出来ます」
大地は先程戦った京に勝てば妹を助ける事が出来た事に悔しさを露にする。
しかし、京に負けた以上再び戦いを挑んでも勝てる保証は無い。
大地はより確率が高い選択肢を模索する。
「それ以外は?」
「白魔術:治癒魔法等でも治療出来ますよ」
「全国の病院に患者は居る美咲を助けるまでに3週間かかると言われた。俺は、早く美咲を助けてやりたい」
「医療機関を頼らないとなると治癒系の能力、異能力を持ち方に頼られては?」
「そんな人間を知っているなら、頼っている」
「……やはりオリジナルに頼る事が一番かと」
ナギアのその一言は大地にとっては絶望の一言でしかなかった。
京に戦いを挑み、敗北した大地が今さら頼み込んでも聞き入れて貰える保証は無い。大地は地面方位の能力によって京と、ナギサの位置を確認する。それと同時に理解する。目の前に居るナギアは人間では無いことを。ナギサは人間として把握出来るが、目の前に居るナギアは大地の能力で人間として把握出来ない。それ故に研究所の医務室までの道を大地の能力で人間を避けて造ったにも関わらず、ナギアはそこに居た。
つまり、ナギアは人間では無いことを大地は理解する。
「ナギサなら治せるんだな?」
「はい」
大地の問いにナギアは迷うことなく、答える。それだけの自信があると大地は確信する。
「では、俺はナギサの元に行く。……お前はどうする?」
「私も行きます。オリジナルに会ってみたいですから」
今までとは違いナギアは好奇心を露にする。
大地は美咲と愛花を抱え、ナギサの居る場所に向け歩き始める。
「女性を二人抱えているにも関わらず、普通に歩けるんですね?」
「力だけが俺の取り柄だからな」
大地は美咲と愛花を抱え余裕そうに歩き続ける。