第20話 ピンチとチャンス
宙にある炎神の魔盾は炎に包まれ、消えていく。
俺は転びかけたがちゃんと着地に成功した。
「もう逃げ場は無い」
檜山仁はそう言うと右手を俺に向ける。
俺と檜山仁の距離は今までに無いほど接近している。
俺にとっては最大のピンチだ。しかし、同時にチャンスでもある。
この距離では檜山仁の紅色の炎を防ぐにも避けるにもかなり厳しい状況だ。
だが、それは檜山仁も同じだ。
檜山仁は右手を大きく開き、紅色の炎は右手を覆う。
俺はそれに対抗するため、炎神の魔武器を発動させる。
これで決まる。
決めきれなければ、俺は死ぬだろう。
俺の右手は炎に包まれ、炎は縦に伸びていく。
俺は右手に握ったそれを大きく振るう。
「炎神の魔剣……こいつで勝負だ」
全てはこいつから始まった。
炎神の魔武器から作れる炎神の魔剣。
炎神の魔剣は所々炎が燃えており、その炎は炎系の魔法、能力、異能力の中でもトップクラスだが、遠距離では話にならない。
炎神の魔剣が一番力を発揮するのが接近戦だ。
檜山仁の紅色の炎よりも先に俺の炎神の魔剣の一撃が先に攻撃できる。
俺は檜山仁に向かって、炎神の魔剣を振るう。
俺は炎神の魔剣で檜山仁の右側の脇腹を当てる様に振るった。
檜山仁の右手は俺に向けられており、防御に移れないはずだ。
檜山仁は自身の右側に魔法陣を実現させる。
(何……しまった、忘れていた。こいつは魔法も使えるんだ)
……ここで止める訳にも行かない。
このまま炎神の魔剣を振るう。
俺の炎神の魔剣と檜山仁が実現させている魔法陣がぶつかり合う。
俺の炎神の魔剣は魔法陣にぶつかると共に激しく燃え上がる。
檜山仁の右手は俺にしっかりと向けられており、紅色の炎は徐々に大きくなる。
これは時間の問題だ。
俺の炎神の魔剣が先か、檜山仁の紅色の炎が先か……ここで逃げて防御すればこの場は凌げるかもしれないが、檜山仁にこれ程接近できるチャンスは無いかもしれない。
このチャンスは生かしてみせる。
だが、檜山仁の紅色の炎が撃たれれば俺は死に炎神の魔剣を奪われてしまうだろう。
……逃げる訳には……炎神の魔武器持ち主の想いに答えるなら答えやがれ……