第2話 木山廉
三月三十一日
「早くレヴァンティンをよこせ」
コンビニの帰り道に突然襲われ逃げている最中に男は手に紅色の炎を灯し迫ってくる。少年は、そんな状況にも関わらず、どこか慣れた様子だった。
少年ー木山廉の異能の炎神の魔武器は珍しいらしいくたまにこうして狙われる。
炎神の魔武器は廉が創造しただけで炎に包まれた武器を作り出す事が出来る。その中でも炎神の魔武器で作った剣……炎神の魔剣を狙ってよく襲われる。
神器を奪うには体内に宿した持ち主を殺す事によって、奪う事が出来る。しかし、必ずしも奪えるとは限らない。手にして、神器が認めなければ手にする事は出来ず、小一時間で消滅し、産まれてくる赤子の体内に宿ると言われている。これらの事から、廉を追いかける者は廉を殺そうとしているのは明白だった。
(とりあえず、ここまで来たら大丈夫だろう)
廉は裏路地に入り、何の保証も無いが大丈夫だろうと言う思いでその場に留まる。この裏路地は人通りも少なく、何よりも人一人が入るのが精一杯でここまでは追って来ないだろう。問題はいつまでここで隠れているかだ。ここは裏路地でネズミが好き好んで居るような場所、臭いがかなりきつく、出来れば早くこの場から離脱した所だ。辺りを見渡すと飲食店の換気扇、廃棄物が見える。臭いのおおよその理由を把握した廉は鼻を摘まむ。
(誰だ)
スマホのバイブによって、臭いと狭さによって少し苛立ちながらも確認する。画面には
「早く帰ってこい」
とそれだけ……妙な恐怖を感じる。廉はスマホで時間を確認する。
今の時間は20:06……廉は額から冷や汗を流れるのを感じながら、震えていた。それは襲われていた状況よりも怒らせてはいけない相手を怒らせてしまった事で恐怖の種類が一気に変わった。廉は裏路地を急いで飛び出す。ここで襲ってきた相手と戦闘になって、廉に後悔等はない。
廉はただ走り続けた。
「はぁはぁ」
廉は息を切らしながら走り、家の前に到着していた。幸運な事に廉を襲った人物と遭遇する事なく済んでいた。家にたどり着いた廉だったが、家の表札には川上となっており、木山の名字の廉にとっては、この家は下宿先の様な場所と言える。廉は玄関から入る事なく、家の隣にある川上道場に向かう。
「遅れてすみません」
廉は恐る恐る告げ、道場へと入っていく。その直後、廉は警戒心を強め、道場を見渡す。
「廉、遅い」
「すみません」
廉は条件反射的に謝る。怒られたから謝る。ただそれだけだ。
「何だ、舞か」
黒髪に色白な肌の少女ー川上舞である。