第199話 大事な人を守るため
京のその言葉には嘘は無い。それを誰よりも理解しているのはナギサだった。
「……きょ、京」
京の隣に立つナギサは照れながら告げる。
これ程自身を思う存在となった京にナギサは戸惑いながらも自身のこの感情に気が付く。これこそがナギサに初めて出来た神の頭脳を目的としない人間だと言う事を
「心配するな。俺に任せておけ」
京はナギサの頭に手を置き笑顔で告げる。
しかし、地面方位と地獄戻りの能力には戦闘における差が存在している。
「……実力で連れていくぞ」
大地の覚悟は本物だ。
今の大地なら妹ー美咲の為なら人すら殺す勢いだ。
「言葉を交わすよりも拳を交わすのが男だろ?」
「……悪いがお前の拳は俺には届かん」
「言ってろ。直ぐにぶん殴ってやる」
二人の男は止まる事はない。
お互いに守りたいものを守るため動き出す。
京は走り出す。地獄戻りは死なないと発動しない能力の為、死なないと無能者と言える。
そんな京とは違い。地面方位は地面操作を行う事が出来る。その差はデカイ。この戦いにおいて。
走り、大地の元に走る京は止まる事はない。
大地は一歩も動く事も無い。
京の目の前に勢い良く地面が隆起する。
京は足を止める事が出来ずに隆起した地面にぶつかる。ぶつかった衝撃に京は倒れる。
「京」
「……く、来るな」
「無理だよ。私の能力で京の能力を底上げすれば……」
「……要らない。お前には能力を使って欲しく無い。お前は普通のガキみたいに笑って良いんだ。遊んで良いんだ。食べて良いんだ。」
ナギサの神の頭脳の能力によってナギサの過去を全て京は知った。狭い研究所に押し込められ、食事も遊びもろくに与えられない事を。だからこそ、京は立ち上がる。ナギサは普通の子供に戻す為に。
何度でも立ち上がる。
「分からないのか?お前は無能者みたいなものだ。俺には勝てない」
「それがどうした?勝つしかない。だったら勝つだけだ」
「……その覚悟は認めよう。だからと言って勝てる訳では無い」
「うるせぇ。勝つんだよ」
「……?何だ?これは?」
京の全身から黒いオーラが放出さられる。
そんな京の姿を見たナギサは確信する。
「覚醒。私の能力で京の脳の潜在能力を底上げした……あの時に目覚めていた」
「覚醒だと?」
大地は知識として覚醒を理解していたが、実際に見るのは初めてだ。