第197話 萱沼大地
大柄で筋肉質な黒髪の男ー萱沼大地は妹である萱沼美咲をドレア・ドレスの幻術から解放させる為、動く。
大地は能力者育成機関東京本部に戻っていた。
「渡辺京は何処に居る?」
大地は能力クラスで男女共に人気のある優菜に話しかける。
大地の目的は京とナギサを研究所に連れていく事だ。
京の情報をいち早く得るためにはクラス事を誰よりも知っていて、誰よりもクラス全員を見ている者に聞く事にした。大地は優菜に聞いて、何も知らなかった場合他の者に聞くことは無いだろう。優菜の知らない情報を他の者が知っている可能は低い。だからこそ、大地は優菜に聞いた。
「……京君なら外に出たわ。個人練習をするなら学校の外に出ることは許されないから……任務中かしら。それなら警備員も外に出ることを許してくれる筈だしね」
「そうか。分かった」
優菜の話を聞いた大地は何の迷いも無い歩き出す。
そんな大地の姿を見て、優菜は疑問に思ったが、その足を止めようとはしなかった。
「何処に向かうの?」
ゲームセンターから出て直ぐにナギサは京に質問をする。
何の計画を持たない京の行動はナギサとっては安心出来ない時間を刻む事になる。研究所からの刺客がいつ来るか分からない状況でナギサは持てる知識を逃走に費やす事に決める。
「取り敢えず、昼でも食べに行くか」
ナギサとは違い逃走するよりも普通の日常をナギサに体験させようと動く京には危機感が全く感じられない。それはいつも通りと変わらない東京本部の雰囲気が京をそうさせるのかもしれない。
「待って……」
「……何だ?」
ナギサは角を曲がった所で京に制止を促す。
京は何故ナギサが制止を促したのか理解出来ていなかった。
その答えは直ぐにナギサから伝えられた。
「道が変わってる」
「道が?」
「うん。間違いないよ」
「ここは普段来ないからな。工事でもしたのかもな」
「……裏路地や分かれ道が消えている」
普段使わない道の変化に気づけない京とは違いナギサは世界中の地形を把握しているナギサは道の変化に警戒を強める。
そんなナギサを見た京は他の変化が無いか確認する。
京は後ろを振り返り、ナギサが言う道の変化に気づく。
「何だ……これ?」
驚愕の声を上げる京にナギサは京の元に駆け寄る。
「どうしたの?」
「今まで歩いてきた道が一本道になってる」
「……地形を変化させる能力」
「……能力?他の人間も居るだろ。まさか……」
「殺してないと思う。騒ぎになっていると思う」
ナギサの言う通り何の騒ぎにもなっていない。