第195話 迫り来る者
「ナギサが逃げた?」
「申し訳ありません。成田様」
チーム[三羽烏]の候補生ー成田智則は怒りを露にする。
成田は自身の能力を覚醒させる事が出来る存在が消えた事により、焦りに焦っていた。
「どこに居る?」
「分かりません。渡辺京が連れていきました」
「渡辺……京?」
「能力育成機関東京本部にある高校に通う男です」
「何年だ?」
「えっ?……一年です」
急に問われた学年に研究者は戸惑いながらも答える。
学年を聞いた成田は笑みを浮かべる。
「萱沼を連れてこい」
「萱沼美咲は寝ていますが……」
「兄のほうだ」
「……分かりました」
研究者は成田に言われるがまま連れていた。
「お前は出ていけ」
「はい。……失礼します」
連れた来られた男は周りをキョロキョロと見渡す。
「美咲を助けてくれるんだろう。一体いつになったら目を覚ます」
「ドレアさんの幻術は凄いからな……」
「しかし、ここなら何とか出来るかも知れないって」
「かも……だろう?……方法が無い訳じゃ無いけど」
「本当か?」
「しかし、あいつは今さっき連れ出された。連れ戻してくれないか?」
「連れ戻せば美咲は目を覚ますんだな?」
「ドレアさんの幻術は五感に強く訴えかけるものだ。ナギサの神の頭脳は治す方法を幾つも知っているぞ。連れ去ったのは渡辺……京。お前と同じ学年の同じ能力クラス……ナギサと渡辺京をここに連れてこい」
「……直ぐにでも」
その言葉を残してその場を後にする男を眺めながら、成田は動き出す。
「どちらへ」
「本部に戻る」
「そうですか」
成田は緊張した様子で動き出す。
それは、チーム[ゼロ]において成田の立場はそれ程の良いものとは言えないからだ。そんなチーム[ゼロ]に戻ろうとする成田の足取りは重い。
チーム[三羽烏]の候補でもあるが成田1人ではない。数百人が居るなかで結果を出さなければいけないのだが、成田は報告するほどの結果を何も出せていない。それどころか任務であった神の頭脳の情報を全て回収するまでの護衛とその後のナギサの処理までが成田の任務だったが、現在は情報の全ての回収は完了したが、ナギサの処理は出来ずに居た。
成田はナギサを処刑する部屋で自身の能力を覚醒させる方法を聞く予定だったが、京によって連れ去られた為、美咲の兄にナギサの回収を任せて、自身はチーム[ゼロ]が拠点とするビルに向かう。
その場所は見えず、触れる事も出来ない。
その為、成田はチーム[三羽烏]のリーダーデュラーク・クラークに電話をする。