第191話 渡辺京
その男はつまらなそうに道を歩いていた。
茶髪で筋肉質なその男は皆が特別訓練をしている中、その男ー渡辺京は東京本部の地下である任務をやる様にと言われ、断る事なくその任務を受けた。
京が持つ能力は戦闘向きとは言えない能力だ。
地獄戻り。
死んだとき、死ぬ前の一分から五分間での間に戻る事が出来る能力。
確実に死なないと効果無い能力の為、戦闘向きとは言えない。
そんな能力を持った事を後悔しながら目的地の東京本部の地下施設の入り口にたどり着いた。
その場所はエネルギー開発所から少し離れた場所であった。
「待っていましたよ。実験は30分後に行います。座って待っていて下さい」
白衣に身を包んだ男は笑いながら告げる。
そんな男にイラつきながらも京は椅子に座る。
京の任務は武器の威力を試すものだ。
その武器に殺され、どの様に殺されたかレポートすると言うものだ。
この任務は京みたいな特殊な人間しか行えない。やっと現れた人材に研究の職員はどこか嬉しそうだ。
「貴方も殺されるの?」
殺伐とした雰囲気が漂うこの場所に似合わない声に京は驚く。
京は向かい合っている椅子に一人の少女を見つける。
京は周りを見渡す。そこには京と少女の二人だけしか居ない。
京は自身に話しかけていたのは目の前に座る少女だと理解する。
その少女はこの場所に居るにはあまりにも若い。若すぎる。
見た感じ、小学生と思える程の若さだ。
「こんな所で何もしている?」
京は目の前に居る少女に語りかける。
誰かを待っている様子も無く、ただ大人しく、座っている。
防音対策が施されているにも関わらず銃声、爆発音が少しだけ漏れている中、少女は何の反応も見せない。
「……ここは武器開発と殺しと遺体の処理を行う機関。ここで私は殺されるみたい」
「何を言っている。お前みたいなガキを何で殺す必要がある?」
「私が必要無くなったから……だよ?」
少女の言葉の一つ一つが重く聞こえてくる。その言葉には嘘を感じらさせない様に思えてくる程に。
「本当に死ぬとしたら、何でこんなに落ち着いている?」
「最初から決まっていた事だから」
「決まっていた事?」
「私は演算によって両親を決め、産まれた時から決まっていたんだよ。私の知識をコンピューター、クローン、アンドロイドにインプットされたからもう必要無いんだよ」
「知識?」
目の前の少女の持つ知識何て僅かなものだろう。
そんな少女に京は疑いの眼差しをむける。
そんな京に対して少女はため息を一つ付くと少女は京の隣に座る。
「そこまで疑うなら見せてあげる」
「……見せる?どうやって?」
疑い続ける京に少女は両手を合わせて、目を閉じる。
そんな少女の頭上から光輝く脳が出現する。
「なんだこれ?」
隣で起きている現象に理解が追い付かず、ただそれを見ている事しか出来なかった。光輝く脳は京の顔に近づく。
光輝く脳は京の脳と同化する。