第176話 実験体
「完成だと?」
「そうだ。人間をデュラハンにする事が出来る剣……デュラハン・ブレイブ」
「まさか。チーム[ブラッド・エルフ]でも10年間のかかった技術をお前が出来る訳も無い」
「……出来るさ。お前から10年間の記憶を借りる」
チーム[ブラッド・エルフ]のリーダーは激しく動揺する。
理解は出来ていた。しかし、これを認めてしまったらチーム[ブラッド・エルフ]での10年間が無駄になる事を意味していた。
だが、分かっていた。
自身が持つ記憶と一緒に錬成術された事実を。
「いきなり試す訳にもいかない。お前を生かしていたのもこの為だ」
デュラークはデュラハン・ブレイブを上に掲げる。
そのまま振り下ろせば、チーム[ブラッド・エルフ]のリーダーの首をはねる事が出来るだろう。
デュラークは勢い良く剣を振るう。
デュラハン・ブレイブは簡単に首をはねたが、地面に弾かれる。
デュラハン・ブレイブは生物を切断させるだけの剣となっていた。
その為、首ははねされたが、地面に傷一つつける事が出来なかった。
これはデュラークが黒呪術ーチーム[ブラッド・エルフ]のリーダーの記憶と共に錬成術を使用した為この結果になった。
チーム[ブラッド・エルフ]のリーダーが持つ記憶は人魚の錬成方法が存在していた。
デュラハン・ブレイブには人体と動物のみを切断出来る剣に錬成されていた。
今までデュラークが使って来た黒魔術:錬金術は等価交換の原則に縛られ、魔法石、賢者の石を使うことでそれ以上の物に変換する事が出来る。しかし、デュラークが会得した黒呪術:錬成術は等価交換の原則からかけ離れたものになっている。自身の持つ魔力を使用することで、常識から外れた錬成が可能となる。
今回は相手の記憶と自身の持つ魔力と賢者の石と同化した剣を錬成することでデュラハン・ブレイブを完成させた。
これでデュークとイギリスを救う事に成功した。しかし、デュラークの顔色は優れない。
デュラークはこれからデュークの首を切り落としに向かう。
しかし、それは弟との最後の別れを意味していた。
デュラハン・ブレイブを完成させる為にデュラークは管理する神を敵に回した今、デュラークは自身の死を覚悟して、弟の元へ向かう。
デュラークは転移魔法でデュークが居る魔法艦隊ーキングに移動した。
「……それで、弟とイギリスを救う事は出来そうか?」
デュラークの目の前にドラゴが立ち塞がる。