第170話 全ての竜を統べる神(ドラゴン・オブ・キング)
全ての竜を統べる神。
それがドラゴ・クラークの異能だ。この異能はどの属性の竜でも造れるだけで無く、全身から竜を出すことが出来る。翼だけ出して飛行も可能だ。
しかし、デュラークが気にしているのはドラゴでも、ドラゴの異能でもない。ここにドラゴが来た理由だ。一つだけ確かな事はドラゴが来たからこそデュラークとデュークはあの部屋から出る事が出来た。警備も屋敷の人間もこの騒ぎで防衛に向かった為、デュラーク、デュークの二人は誰とも会うこと無く、移動できる。
中庭に居る無数の竜は屋敷の壁に頭突きを始める。
屋敷の中に居るデュラークはどこから出るか考える。
出入りに使う扉からは現在は竜の体によって塞がって居るため出られない。
他の出口を探す中、壁を破壊して無数の竜の頭がなだれ込む。
デュラークは一頭の竜と目を合わせる。
目を合わせた竜はデュラークの元にゆっくりと近寄る。
「早く、ここから逃げよう」
デュークは近づいてくる竜を確認するとデュラークに逃げられそうな場所を指差し、逃げる様に促す。
しかし、デュラークが逃げる事は無い。
「必要無い」
デュラークはそう一言告げる。
デュラークの考えが分からないデュークはただ立ち止まる事しか出来なかった。立ち止まる二人に対して竜はやって来る。竜はデュラークの手前で止まると大きく口を開く。そんな竜の口から一人の男が現れる。
デュークが会った事も無い人物の登場に気を引き締めて、いつでも戦闘出来る体制に移行する。そんなデュークとは違いデュラークは目の前の男が何者なのかしっかりと理解している。黒髪で自信満ち溢れた男ードラゴ・クラーク。
「何の用だ?」
竜の口から出てきたドラゴに対してデュラークは威圧する様に告げる。
どんな要件にしろここドラゴが来た事から、嫌な予感をデュラークは感じていた。そんなデュラークの嫌な予感は的中してしまう。
「お前に用がある訳じゃ無い。後ろに用がある」
デュラークの後ろにはデューク一人しか居ない。詰まり、ドラゴの要件がデュークである事になる。しかし、デュラークは勿論、デューク本人ですらドラゴがここに現れた理由は分からない。
デュラークは転移魔法を発動させ、デュークを強制的に移動させる。
「何してるのか、分かっているか?……俺は魔導艦隊ーキングでここに来ている。詰まりはイギリス王室からの勅命だぞ。これに背けば反逆罪に問われるぞ」
「屋上に移動させただけだ」