第168話 クラーク家
デュラークとデュークの兄弟関係は普通の兄弟とは異なる。
それは全てクラーク家での生活がそうさせた。
クラーク家はイギリスでも名門とされる上流貴族の家系、それと同時に魔法、能力、異能多才な人材が溢れていた。
クラーク家に初めて誕生したデュラークとデュークの兄弟は錬金術師として英才教育を受けてきた。
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これはデュークにまだ頭があり、デュラークが管理する神に加わる前の物語。
薄暗いその部屋に兄弟は押し込まれていた。
そんな部屋に一人の男が顔を覗かせる。
その男は部屋に居る兄弟を見下しながら見つめる。
男は一枚の紙を部屋に捨てる。
「これをやっておけ」
その一言だけ告げると男はその場を後にする。
二人は紙を見つめる。兄のデュラークは落ちている紙を拾うため動く。
紙には錬金術で造る物が記されていた。
今回はケルベロスだ。
「今日はケルベロスだ」
デュラークは弟のデュークに告げる。
しかし、デュークの顔色は優れない。それはデュラークも同じだ。
もしもケルベロスが出来なければ、今日口に何も入れる事は出来ない事を意味している。その為何が何でも成功させたいが可能性は低い。
賢者の石があれば二人とも簡単にケルベロスの錬成は出来るがこの部屋には賢者の石は存在していない。
賢者の石を使用しても顔が三つあるのは良いが足の本数等は確定出来ない。
錬金術の成功率とはその場その場で変わるものだ。
魔法陣を床に描いたり、魔法石等の使用する事で成功率は格段に羽上がる。
魔法石も無い為、二人は魔法陣を描く事にした。
デュラークは薄汚れた床に白いチョークで円を書く。
「凄い」
白いチョークで大きな円を書き終えたデュラークをデュークは褒め称える。
その円は少しもぶれずに描かれていた。デュークが書いたならぶれぶれになっていただろう。円を書き終えたデュラークは文字を書き始める。錬成する物によって異なるが今回はルーン文字を使用する。
デュラークが書く文字も綺麗に仕上げる。出来上がった魔法陣はもはや芸術の域に達していると言っても過言ではない。
これを真似しろと言われれば出来ないと断言出来るだろう。
魔法陣が完成したが肝心の犬が来ない。
「いつもなら……もう来ているはずなのに……」
その状況にデュークは呟く。それはデュラークも理解していた。
しかし、この部屋から出る事の出来ない二人にはどうする事も出来ない。
唯一確認出来る窓から確認するがいつもと変わらない風景がそこにはあった。