第165話 潜入
「俺とあいつが似ているだと?」
「……そう言えば従兄弟だと聞いていたけど……」
仁は暫く考える。
「今から東京本部に向かう……お前はどうする?」
「お供します」
「良いのか?」
「えぇ」
仁はゆっくりと足を進める。
「あの二人は?」
「あいつらは休ませる」
不器用ながらも仲間に気を使う仁の背中を見て、安心した様に正宗は笑う。
二年間会えなかったが立派に成長した仁の背中に頼もしさを感じながら仁の後をゆっくりと正宗は歩き始める。
「東京本部に用でも?」
「お前と同じ奴等を解放する」
「他には?」
「ついでに見る事にする……あいつを」
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仁と正宗は東京本部の高校の体育館に居た。
そこでは廉と翔の戦いが終わりを迎えていた。
「彼もまた強くなって居る様ですね」
「……そうだなぁ……始めるか」
「警備員を倒した事にはまだ気づいて居ない用ですね」
「気づいているさ」
仁は指で窓を指す。
正宗は窓から外を眺める。外では警備達があわただしく動いている。
そんな状況を見て、正宗は動き出す。
「急ぎましょう」
扉を開け、仁を誘導する正宗。
仁は歩き始める。
二人は目的地である能力者育成機関東京本部エネルギー開発所にやって来た。
「下には行かないのですか?」
「犯罪者達は要らねぇ……ここに用がある」
仁と正宗は一人の男がいる目の前に立つ。
男は直ぐに仁と正宗に気付き顔を上げる。
その様子から捕らえられてから間もない事が分かる。
正宗のほうがよっぽど具合が悪く見える。
「外に出る事を望むか?」
仁は光輝く鎖に縛られた男に告げる。
仁はその問いによっては行動を変える。
出ると言えば鉄格子と鎖を破壊し、連れ出す。断れればこのまま放置する。
「……出られるなら……もう一度……」
仁は男の答えに仁は自身の炎に鉄格子と鎖にぶつける事で答えた。
鎖がほどけ男は倒れ込む。
「出てこい」
仁のその言葉に男は無言のまま立ち上がる。
その男は手を鉄格子に向ける。
男の手から風が吹き、鉄格子を細かく切断する。
「風嵐切裂……俺はただでお前を助けた訳じゃねぇ」
「……それで、条件は?」
「チーム「クリムゾン」に入れ」
その男は暫く考え込むと無言で頷く。
「五十嵐家にはもう戻れないしね……住まえる場所があるとありがたいのですが」
「山の頂上にある屋敷で良ければあるぞ」
「……十分」
男ー五十嵐京介を加え、三人で外に向かう。
その途中一人のメイド服の女と出会う。
「あの女はなんだ?」
「回復要員として各フロアにいる一人だよ」
仁は京介に女の情報を聞き出すと行動に移す。
「エネルギーを吸われ続ける者達を回復だけしか出来ない人生を歩むか?それとも……」
仁は右手に紅色の炎を纏わせると壁に向かい放出させる。炎は壁を貫き丸い穴を開ける。この大きさなら一人一人は簡単に通れる大きさだ。
仁と正宗と京介は壁の穴から外に向かう。
外に出る事を一切考えてなかったメイド服の女にとっては初めて訪れた外に出れるチャンスにメイド服の女の足は壁に開けられた穴に吸い寄せられる。
こうして、仁、碧人、デューク、正宗、京介、メイド服の女を連れ出し、北海道支部に向かう。その後廉達と出会う。