第163話 無実
デュークが告げた事で碧人は少し考え込む。
「……そうか……それでどうする?」
「エネルギー開発所の連中は無実である正宗は連れ戻す事は出来ない」
「本当に来ないのか?」
「来るとしたら……闇の者達位だろ」
「本当にここまでして連れ出す価値があったのか?」
「正宗の実力は俺が保証する」
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斉木正宗が何故、能力育成機関山梨支部エネルギー開発所に入れられたかと言えば正宗の両親が関係している。
二年前の檜山家と木山家を襲撃したチーム[カオス]との戦闘中にそれは起きた。
斉木家は代々護衛を務めて来た家系で檜山家の警備を任されていた。
チーム[カオス]がやって来たこの日も護衛の任務に務めていた。
「正宗、仁君を早く連れていきなさい」
「父上は?」
「……やるべき事をする……お前もやるべき事がある筈だ」
父親の言葉に促されて行動に移す。
仁と正宗は山梨支部から東京本部に移動してきた。
「それで、何で東京本部に?」
「日本で最も安全だと考えた結果です」
「……廉の奴も東京本部に来ているんだろう?」
「えぇ、そう聞いています」
正宗は能力を発動させ、日本刀を手にする。
「どうした?」
日本刀を手にした正宗を見て仁は告げる。
正宗は何も答えずに日本刀を手にしている。
そんな二人の前に数人の大人が囲む。
「斉木正宗……エネルギー開発所に来てもらう」
正宗は能力で出していた日本刀を戻す。
「分かりました」
正宗は仁に危害が及ばない様に大人しく付き従う。
「正宗……お前……」
「私の指名は貴方を何があっても守る事……この命一つでどこまでも守って見せます」
正宗がここで拒めば、仁を傷つける恐れがあるために、正宗は事態を最小限に抑えられる様に努める。
正宗は数人の大人達に連れられる。
「ならば、俺の傍で使え」
「……その時が来れば必ず」
一人残された仁はその後木山廉の母親ー木山可憐の異能忘却の業火によって木山家の全ての記憶を失う事になる。
この日正宗が連れられた理由は両親の逃亡だ。
斉木家の使命から逃げ、その代償として正宗を差し出した両親はその後正宗が居た場所よりも地下深くで現在もエネルギーを吸われ続けている。
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何もしていない無実の正宗は二年間生命エネルギーと能力を吸われ続けていた。
そんな正宗にデュークは駆け寄る。
「これを」
デュークは注射器を手に乗せ、正宗に差し出す。
戸惑いながら正宗は注射器を手に取る。
「これは?」
中身が分からない注射器に正宗は疑問をぶつける。
そんな正宗にデュークは兜を取る。
「栄養剤です」
顔が無い人物が栄養剤を持ち歩く事に納得し、正宗は迷い無く、注射器を腕に打つ。




