第150話 出来損ない
右手を切断された男は地面に落ちている自身の右手を見つめる。
しかし、男は声を出すことも無く、眉一つ動かさない。
地面に落ちている右手は一瞬で腐敗する。
「一体どうなってるんだ?」
男の右手を切断した廉は理解できずに戸惑うばかりだ。
「……あの男の肌が違うのは様々な人間の部分を合わせているのか?」
紫音は目の前に居る男を見て考えを口に出す。
右手を失った男は首が転げ落ちる。
「……はっ?首なんて切って無いぞ」
廉は見に覚えの無い事に驚く。
廉が切ったのは右手だけだ。それは事実だ。しかし、男の首は地面に落ちる。
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屋上に居る。
城山は笑いながら転げ回る。
「おいおい、あのガラクタ、マジでガラクタじゃねぇか」
小馬鹿にする城山に対して、デュラークは暗い表情で佇む。そんなデュラークを見て城山は笑うのを止め、デュラークに話しかける。
「デュラーク……そう言えばあの首はお前の弟のデュークの首だったよな?」
「……そうだ」
「大事に腐敗しないようにしていたあの首の回収は良いのか?」
「……必要ない」
「その割には顔色が優れないな」
「……今回の問題はそこでは無い」
「そうか。でも、賢者の石を使っても人間の再生は無理だったか」
「だが、本番はこれからだ」
「残念だったな。成功すれば弟の顔をした者と一緒に居れたのに」
「……弟……か?」
デュラークは地面に落ちた弟のデュークの顔を見つめる。
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右手、顔が地面に落ちてから直ぐの事だ。
次々と体の部位が地面に落ちていく。落ちた体の部位は次々と腐敗をしていく。
廉は炎神の魔装を解除する。
炎神の魔武器を二つ同時に使える様になったが、長時間使う事が出来ないため、廉は解除する。
廉は紫音の元に戻る。
「勝ったのか?」
「戦いにもならなかった様な……」
「何で体が壊れたんだ?」
紫音は暫く考えると氷神の花畑で造った棘の鞭を解除にして廉の問いに答える。
「良くは分からないけど……錬金術で造られた人間かも」
「そんな事が出来るのか?」
「一からは無理でも素材が有れば出来る可能性があるみたい」
「それって」
廉は腐敗した男のを見つめる。
そんな廉に続いて紫音も見つめる。
「様々な人間を錬金術で合わせたのかも」
「動きが可笑しかったが普通の人間と余り変わらない様に見えたけど……錬金術だけで人間が造られるのか?」
「錬金術師達の目標は賢者の石を造り出す事だった」
「でも賢者の石は数は少ないけど造られているんだろう?」