第146話 制御
黒いオーラは覚醒の象徴と言われる。
現在の舞にもその象徴とされている黒いオーラが全身から放出されているが、黒いオーラ以外にも桜色のオーラも一緒となっている。
「険しい表情でどうしたの?……身を委ねたら?」
桜色のオーラが徐々に黒いオーラに呑まれていく。
舞は理解していた。黒いオーラに呑まれれば意識が乗っ取られる事を、だからこそ、舞は抵抗する。
「うるさい……私は……この力に負けない」
舞の意思と連動して桜色のオーラも強くなる。
しかし、舞の顔色は優れない。少しでも油断したら黒いオーラに呑まれる事は一度経験しているからこそ舞は知っている。
舞の戦いは紅桜を手にしている限り、黒いオーラに呑まれ無い様にしながらドレアと戦いをしないと行けない状況に冷や汗が止まらなくなりながらも紅桜を放す事は無い。
「……いつまで持つのかしら?」
黒いオーラに対抗する為に舞は精神力で持ち堪えている状況でドレアが幻術を使えば勝負は一瞬で決まる状況にも関わらずドレアはただ笑みを溢し、舞との戦いを楽しむ事を決めていた。
ドレアは魔力をブラックコートに与え、右袖を伸ばし、剣状にする。
ドレアは舞の距離を詰める。
接近したドレアに対して舞は動けずに居た。
そんな舞を見て、ドレアはつまらなそうに見つめる。
ドレアは剣状に変えていた袖を元に戻す。
「中途半端な力では私には勝てないわよ」
ドレアは己の小さい拳を握る。
その拳を舞の腹目掛け殴り付ける。舞は為す術無く吹き飛ばされる。
つまらない。その言葉がドレアの頭を埋め尽くしていた。
ドレアがその場を離れようとした時だった。
舞の全身から黒いオーラが溢れだす。
桜色のオーラは微塵も無く、黒いオーラだけが放出されていた。
ゆっくりと舞は立ち上がる。
「……歪な覚醒ね」
通常の覚醒と違い意識が乗っ取られる舞を見て、ドレアは呟く。
舞の全身からは黒いオーラが放出されているのに対して、紅桜だけは桜色のオーラを放出している。
意識を乗っ取られている舞を見て、ドレアは直ぐ様ブラックコートの袖を伸ばし、剣状にする。
舞は一歩踏み出すと、高速で移動する。
高速で移動した舞は直ぐ様、紅桜を振るう。そんな舞の一撃にドレアはしっかりと受け止める。
舞は一歩後ろに後退すると紅桜をドレアに向けて、突き刺す。
ドレアはブラックコートに魔力を与え、裾を急激に伸ばす。
伸びたブラックコートの裾は地面に突き刺さり、ドレアは宙に舞う。
舞の紅桜の突きは伸びたブラックコートに突き刺さる。
ドレアが地面に着地をする前に舞は右手から左手に紅桜を持ち変える。
持ち変えた左手で舞は紅桜を振るう。