第145話 本気の舞
翔の一撃はドレアの頭上から真っ逆さまに振るわれる。
まるで落雷の様に……
「勝負は強い力が有れば勝てるものでも無いわ」
翔の一撃にドレアは呆れた様に呟く。
ドレアはブラックコートに魔力を与え、ブラックコートの袖を伸ばし丸柱の形に変える。
(……殴りるつもりか？)
ドレアが丸柱にした意味が理解出来ない翔はそのまま剣を振り下ろす。
ドレアは丸柱に形を変えたブラックコートを翔に目掛けて勢い良く伸ばす。
翔に避ける術は無い。
マントに姿を変えたケルベロスは現在右手に居る。そして翔は魔力を全て右手に注ぎ込んでいる。
翔は地面の着地を捨てて、この一撃に全てをかけた。
ドレアが伸ばした丸柱を避けられない為、翔は丸柱を切り裂く事を選ぶ。
全てをかけて振るう翔に対してドレアは魔力を少し流したブラックコートを丸柱にしてぶつける。
ブラックコートは魔力を与えればいくらでも大きさを変化させる事が出来る以外に決して破壊されないコートだ。
詰まり、翔がどれだけ本気でやってもブラックコートを破く事は出来ない。
魔力が尽きた翔は地面に落ちていく。
「これが実力よ。貴方と私との差は感じられたかしら？」
落ちていく翔にドレアはそう告げると丸柱を縮めて、翔を殴り付ける。
魔力と能力の全てを使い果たした翔は手で防御するも加藤家の屋敷から遥か後方に吹き飛ばされる。
「次は貴女……これが最後の戦いになれば良いけど」
「これで最後よ」
優雅に地面に降り立つドレアに対して、舞は魔剣を向けながら告げる。
「……妖魔剣創造を扱うなら伝説の武器クラスを使って貰わないと……ね？」
「これで十分」
名も無い魔剣を向けながら舞はそう言う。
ドレアはブラックコートに魔力を与え、コートの袖を舞に向けて伸ばす。
伸びた袖は枝分かれする。枝分かれするコートの袖を見て舞は後方に移動を始める。
しかし、舞の移動よりも早いブラックコートの袖の伸びるスピードは舞の持つ魔剣に追い付く。
魔剣に追いつき、魔剣を取り込むとコートの袖は一瞬で元に戻る。
枝分かれし、取り込まれた魔剣はコートの袖が元に戻った瞬間に破壊された。
「……これで十分？」
「……」
「手遅れになる前に持てる力は使う事を進めるわ」
「本気でやってる」
「貴女の前に戦った中鏡愛花も萱沼美咲も加藤彩乃も神田翔も誰一人として手を抜き者は居なかったわ」
舞はドレアのその言葉に何も答える事が出来なかった。
妖魔剣創造の暴走に舞の母親と廉の二人を傷つけたあの日から舞は力を押さえつけていた。
しかし、目の前に居る女性にはそれが必要ない。
「……それで良い……これが貴女の本気？」
舞の全身からは黒く桜色が混じったオーラが激しく放出されていた。
そんな舞の手には一本の剣が握られていた。
その名は紅桜。
