第141話 我流忍術
総助が忍術で作り出した竜は半蔵に向かって伸びていく。
「邪遁:黒宇宙の砲撃」
半蔵は総助が作り出した竜を簡単に破壊する。
自身の忍術が簡単に破壊されたのにも関わらず、総助は笑みを溢す。
半蔵が出した邪遁が本来の威力に近づいているのを肌で感じているからだ。
「これでこそ……兄貴だ」
「お前は相変わらず……俺を煽てる」
「煽ててなんてねぇよ」
「後、一分も有れば十分だ」
「随分とかかるな」
「嫌……あっという間だ」
兄弟はお互いに手合わせで手を合わせた。
兄弟は不適な笑みを溢す。
これが最後の忍術になると二人は疑わない。
「土遁:我流土竜……双頭竜」
総助は地面に両手を強く叩きつける。
その瞬間、地面は隆起し、二つの頭を持つ竜を作り出す。
総助の忍術は全てが我流の為、その場その場で全てが違った忍術となる。
二つの頭を持つ竜は半蔵に狙いを定めると半蔵を目掛けて、動きだす。
「邪遁:黒宇宙の光線」
半蔵は右手から出ている黒オーラは無数に球体となり、鋭く放たれる。
細く、早い一撃は総助の目では追うことが出来ない。しかし、この事実で分かる事がある。
それは、総助が出した双頭竜は一瞬で貫かれ、形を保てず破壊された。
「早いな……相変わらず」
総助は微笑みながら、告げる。
誰にも縛られず、昔のままの兄を見て、総助は思わず微笑んでしまった。
幻術が解けた半蔵は申し訳なさそうに立ち尽くす。
「手間をかけさせたな」
「続き……殺るか?」
「もう良い、強くなったな。総助」
「時間稼ぎしか出来なかったよ」
「……次は、誰の邪魔も無く……続きを殺れたら良いな」
半蔵はそう言うとその場を立ち去ろうと動き出す。
「待てよ」
「どうした?」
「……何処に行くんだ?」
「前だ」
「前?」
「お前にも行くべき場所が有るんだろ?」
「あぁ、翔達が待ってる」
「なら、前に進め」
「俺が見てる前と兄貴が見てる前は違うのか?」
「変わらないさ。人間とは前にしか歩けないものだ。振り向く事が出来ても後ろには行けない……総助お前はしっかりと前を歩いてくれ」
「俺の前に兄貴は居るのか?」
「居るさ。前にも後ろにも」
総助はその場から離れる兄の背中を見て想う。
自身の前にはいつも兄の背中がある。
ただその背中を追い続ける人生に総助が出した答えは我流忍術だった。
昔も今も変わらない。兄は偉大だ。