第137話 兄弟
総助は忍者刀を握り締めながら昔の兄を思い出していた。
三重支部に屋敷を置く服部家は過酷な訓練の日々が続く。
「総助また、泣いているのか?」
過酷過ぎる日々の訓練にいつも泣き出し総助は決まってこの場所に体育座りで居る。
この場所は半蔵と呼ばれる前の颯真が作った秘密基地だ。
半蔵家の屋敷の地下に作られた場所で、二人の憩の場となっている場所だ。
この場所は二年前からあり、子供の颯真に出来る訳も無いが、颯真の遁術だ。土遁とも呼ぶが地形を変化させる魔法の一種だ。
魔法は火、水、風、地、空の五大元素を扱う事も出来る。
この他にも家系の血や、遺伝子情報等で五大元素以外の魔法も扱える様にもなる。
服部家は白魔術:忍術を覚醒させるため日々のカリキュラムを受ける事になっている。
「……泣いて……無い」
総助は精一杯の強がりを見せる。
颯真と呼ばれていた兄がいきなり半蔵と呼ばれる様になった兄との接触方に総助は戸惑い続ける。
それに颯真ー半蔵の立場は徐々に無くなり、総助も関わらない様にと屋敷の者に言われ、総助は尊敬してきた兄と屋敷の者との間に立たされた総助はどうするべきか悩んでいる。
「聞いてくれるか?」
兄のその言葉に否定出来ずに総助は涙を拭いて、兄に目を向ける。
「どうかした?」
いつもとは違う兄の様子に総助は嫌な予感を感じる。
「俺は来年から北海道支部の高校に通う事にした」
「はぁ……三重支部だろう?」
「嫌、俺の居場所はここにはない」
総助は何も言い返せない。
確かに半蔵と呼ばれ初めてからこの屋敷にも、三重支部に居場所は無いと言っても良いぐらいだ。
強すぎる颯真に三重支部に居場所は無い。三重支部は能力者の集まりと言われる程の能力者の数が多く、魔法を扱う者は少ない。
その中で、黒魔術:忍術に覚醒してしまった為に孤立してしまった。
「総助、お前はこっちに来るなよ」
「こっち?」
総助は颯真が言ったこっちと言うフレーズが引っ掛かる。
こっちとは北海道支部の事か?それとも別の物か?総助には理解出来なかった。
その答えは颯真が答える。
「闇だ」
「闇?」
「俺は巻物を奪い。北海道支部に向かう」
「……その巻物が闇か?」
「……総助……お前は白魔術に目覚めてくれ」
総助はただ兄の言葉に耳を傾ける事しか出来ずに居た。
颯真は襲名した半蔵の名を語り、服部家の家宝の巻物を奪い、北海道支部に向かった。
行く事を理解していたが総助は止める事をしなかった。