第136話総助の挑戦
翔の提案通り徒歩での移動を開始したチーム[チャレンジャー]は目的を当麻家、加藤家を目指し歩き始めた。
神田家から近い当麻家を目指し行動を開始する。
「……止まれ」
ふらつきながら一人の男が立ち尽くす。
「……兄貴?」
総助は目の前に立ち尽くす実の兄に驚きを隠す事が出来なかった。
服部半蔵それが総助の兄の名だ。
本名は颯真だが、この若さで当主を任された瞬間から半蔵の名を襲名した。
その実力は幼い時から間近で見て来た総助が一番理解している。
「ここは俺がやる。竜、翔の事を頼む」
「総助……」
「兄貴と戦いば俺達三人は倒されるだろう。時間稼ぎは俺がやる」
総助はここに居る誰よりも目の前に居る男の強さを知り、勝ち目の無い勝負になる事を理解している。
もし、この場を逃れる方法は誰かが服部半蔵を止める必要がある。
その役目を総助はやるつもりだ。
「……翔、行こう」
竜一は総助の意思を尊重する。
翔は総助をじっと見つめる。
「行ってくれ、俺達は強者に挑戦を続ける……チャレンジャーだろ?」
「先に行って待ってるよ」
「おう」
翔と竜一は総助に任せ、走り出す。
総助は自身の背後に走る仲間を感じながらも目の前に居る兄に対して疑問を感じる。総助が知る兄、服部颯真は幻術にかかる様な男では無い筈だ。
服部颯真は歴代で初めて黒魔術:忍術を会得した男で服部の全ては総助を初め、白魔術:忍術となるのだが、颯真は黒魔術:忍術に覚醒した。
この覚醒により颯真は半蔵の名を襲名した。
そしてその実力は総助が一番理解している。
颯真ー半蔵は腰に装備していた忍者刀を手にする。
総助は魔法陣を展開させ、右手を魔法陣に入れ忍者刀を取り出す。
お互いの忍者刀の姿、形に変わりは無いが、半蔵の忍者刀は魔法石を取り込み、強化された忍者刀だ。
魔法石は賢者の石よりも劣るが、数が多く扱い安い為、数多くの人間が扱う。半蔵が持つ忍者刀は通常の忍者刀よりも強度があり、忍者刀の弱点を補う為、伸縮性を兼ね備えている。
忍者刀は刀身が短く、扱い憎い。好んで使う者は少ない。しかし、この二人は好んで扱う。服部家で学んで来た二人にとってはこの忍者刀が最も扱い易い武器となっている。
半蔵と総助は同じ武器を持つが圧倒的な差は埋まる事は無い。
二人は忍者刀を逆手で持ち、お互いにその場で動かずにその時を待つ。
幻術にかけられているが兄の実力が変わる事は無い。
総助は忍者刀を強く握りしめる。