第134話 ドレア・ドレス
舞は直ぐに剣を造り出し、ドレアに向けて勢い良く振るう。
ドレアは右手の裾で簡単に防ぐ。簡単に防いでみせたドレアは左手を舞の腹に当てる。
その瞬間にドレアが着ているブラックコートの袖は真っ直ぐ伸びる。
防御も出来ずに舞は後ろに吹き飛ばされてしまう。
伸びた左側の袖は元に戻る。
「後は貴女だけね」
ドレアは彩美を見つめながら告げる。
彩美は何も言い返す事も出来ない。
これは誰の目から見ても彩美に勝ち目は無い。
彩美は右手に雷を纏わせる。これでいつでも撃てるが、彩美は撃つ動作に移らない。
何度も防がれた雷撃を撃っても意味が無い。
彩美はドレアに確実に当てるその瞬間を待つ。
「撃たないの?」
ドレアは右手に雷を纏わせながらも動かない彩美に疑問をぶつける。
彩美は答える事無く、舞に目を向ける。
気絶したのか動かない舞を見て、彩美は一人でドレアに戦わなければいけない事を自覚する。
「やるしか無い」
彩美は効かない事が分かっていたが雷撃を放つ。
ドレアは右側の袖を伸ばし、四角にすると彩美の雷撃を止める。
彩美が出来る事は数少ない。だが、少ないからこそやるべき事が分かる。
ドレアの強みは黒神の衣だ。
ドレアが着ている黒い衣服の強度は凄まじい。
黒神の衣は限定的な能力では無く、永続的な能力だ。
詰まり、彩美はドレアのブラック・コートの死角を狙うか、ブラック・コートを脱がせるか、だがどちらにしても彩美が苦手な接近戦で無ければどちらも難しい。
彩美は両手を雷を纏わせる。
雷切姫と呼ばれる彩乃が両手に雷を纏わせる事は無かった。
コントロールに難がある彩美の雷属性の魔法は片手でも難しいのに彩美は両手に雷を纏わせる。
右手の雷はいつもやっている為安定している。しかし、左手の雷は安定しない。
左手の雷は徐々に大きさを増し、左手から大量の血が流れる。
彩美は雷属性の魔法を止めずにドレアに向かって撃つ。
ドレアは自身の目の前に魔法陣に展開させる。
咄嗟の判断で撃った雷撃は魔法陣にぶつかると直ぐに分散してしまう。
彩美の雷撃は一度手に纏わせ、雷の威力、量を上手くコントロールしてから撃つ為、時間がかかるのはもちろんのことだが、集中力も必要となる。
片手でも難しい事を理解していたにも関わらず彩美は両手でやってしまった。
それぐらいやらないと勝てないドレアを目の前にして彩美は選択を誤った。
左手は血だらけになり、彩美の雷の属性の魔法に耐えられる筈も無い。
圧倒的な差があるにも関わらず、彩美は片手を使えない状況に陥った。