第133話 黒神の衣(ブラック・ドレス)
「もう一度さっきの手順でお願い出来る?」
「うん。任せて」
彩美の指示通りさっきと同じ様に剣を造りだし、直ぐ様投げつける。
舞の先程と同じ動きにドレアも同じ動きで対応する。
しかし、先程とは違い剣が飛び交う中鋭い雷撃が勢い良く彩美の右手から放たれた。
剣をブラックコートの袖で弾いているドレアはもう防ぐ手立て無い。
彩美は勝利の笑みを溢す。
それと同時にドレアも笑みを溢す。
そんなドレアを見て、彩美の笑みは消えていく。
ブラックコートの裾が急激に伸びる。
これはブラックコートの最大の特徴だ。
ブラックコートは魔力を与えれば与える程伸ばす事が出来る伸縮が可能なコートである。
伸びたコートにより、彩美の雷撃は簡単に防がれてしまう。
「……接近戦でやるしかないよ」
剣を投げ続けていた舞は手を止めて隣に居る彩美に告げた。
遠距離から雷撃と投げつける剣では全くドレアには効かない状況に舞は今までとは違った方法を彩乃に伝える。
彩美は直ぐには答えを出さない。出せない。
雷切姫と呼ばれている程の実力がある彩美しだが、彩美の雷撃は手に覆われた雷を調整して撃つものだ。
雷の量を間違えると手に留めておく事が出来ずに、放電してしまう。
正確な雷属性の魔法の調整を強いられる為、彩美は遠距離での戦闘を最も得意としている。
彩美が苦手としている接近戦で戦いは出来る限り避けたい所だが、舞一人でやらせる訳にも行かない為彩美は渋々答えた。
「……分かった」
舞は妖魔剣創造を発動させ、剣を造り出す。
そんな剣を見て、ドレアは呆れてしまう。
妖魔剣創造は剣は勿論、物を造り出す能力だ。
魔剣、妖刀、妖魔剣、魔装等この世にはないとされる物の創造も出来る。賢者の石も造れる可能性もある。
そんな能力があるのにも関わらず舞が手にしている剣は普通の剣だ。
舞は自身の暴走を恐れ極力、能力を押さえる様にしている。
接近戦を仕方なく、やろうとしている彩美と異能を押さえて使う舞はドレアからしたら弱々しく見えてしまう。
「何とか、私が隙を作ってみる」
「うん。お願い」
目の前にドレアが居るにも関わらず、隠す事無く話を進める二人に余裕は無い。
舞は一気にドレアとの距離を詰める。
舞は素早く剣を振るう。
「良い剣筋ね」
舞の剣を袖で受け止めたドレアは笑顔で舞に告げる。
袖と言ってもドレアには黒神の衣がある。
その為、ブラックコートの強度は凄まじいものになっている。
ブラックコートを着ているドレアにダメージを与えるにはブラックコート以外を攻めるしかないがドレア程の人物がそれを許す筈も無い。
舞の剣は全てドレアが着ているブラックコートによって防がれてしまうだろう。それ所か舞が振るった剣は欠けている。
普通の剣を使う限り舞の剣は全て使い物にならない事がこの瞬間舞は理解する。