第132話 雷切姫
「可笑しいかしら?」
「明らかにブラックコートの能力からかけ離れている」
「そうかしら」
「ここに居る誰よりも私はブラックコートについて詳しい……ドレア・ドレス貴女よりもね」
「……そうね。これは幻術でも無いわ。私の能力が黒神の衣……ただそれだけ」
「黒神の衣?」
ドレアが魔法、能力、異能を使うのは有名な話だ。
しかし、彩美を初め、代々の人間はドレア=幻術となっている。
これはドレアが主に幻術を使い、幻術だけで全てが片付いてしまうからだ。
詰まり、ドレアは幻術だけで十分に戦える事を意味している。
彩美は黄色い雷を右手に纏う。
彩美は北海道支部で雷切姫と呼ばれている。
それは彩美の雷は触れた物を全て切り裂いた為、そう呼ばれている。
ドレアがブラックコートと黒神の衣が無ければ確実にドレアの体は引き裂かれていた。
彩乃の雷撃は例えブラックコートを貫く事が出来ずとも、相手にダメージを与える代物だ。
彩美は再び雷撃を使える様に右手に雷を纏わせる。
隣に居た舞も自身の異能、妖魔剣創造の能力によって一本の剣を造り出す。
「……協力して」
彩美は自身一人ではドレアと戦う事は出来ないと考え、舞に協力を頼んだ。
「うん」
舞は何の躊躇いも無く、一言。
「剣はどれぐらい造れるの?」
「幾つでも」
「そう……じゃ、暫く投げ続けて」
「任せて」
舞は彩美の指示通り動く。
妖魔剣創造で剣を造り直ぐ様投げる。
これを何度も繰り返す。
全ての剣を弾き、地面には無数の剣が無造作に落ちている。
ドレアが剣を弾く全てを見ていた彩美は一つ分かった事がある。
ドレアの服装は白いYシャツの上にブラックコートを着ていて、黒いスカートは膝下で靴はブラックブーツだ。
白いYシャツ以外は全てが黒い衣服だ。
剣を弾く時、ドレアは顔と手と白いYシャツ部分とスカートからブラックブーツまでの素足だけだ。
そしてその場所に飛んできた剣は全て確実に弾いている。
彩美は確信する。
ドレアの能力黒神の衣は黒い衣服を強化する能力と言う事を確信する。
彩美は自身の雷撃を撃っても当てられる確証を持てずに居た。
彩美が雷撃を放っても落雷程のスピードにはならない。
だが、威力は落雷以上だ。しかし、当てられないのなら意味の無い事だ。
勝負を決めるなら、彩美の落雷を一度でも当てられれば勝てるだろうが、ドレアに隙は無い。
彩美の考えは一つ。隙が無いなら作れば良い。