第128話 黒魔装:ブラックコート
愛花の魔法固定砲台から圧縮された砲撃が来るのは目に見えているが、ドレアは一歩も動かない。
普通に魔法を放出するよりも愛花の魔法固定砲台としての威力の差は余りにもかけ離れている。
しかし、魔法固定砲台の弱点は有り過ぎる。
まず、魔法陣を設置する。この時、もう魔法陣を動かす事は出来ない。魔法陣から圧縮した魔法を放出する場合、表と裏からどちらからでも出せるだけで無く、両方から出すことも出来る。
しかし、魔法陣の中心に魔法を圧縮する時にその威力に比例して時間を費やす。
詰まり、魔法固定砲台とは遠距離から狙うのには困らないが、近接になればなる程、簡単に避けられてしまう。
魔法固定砲台は魔法陣から放出される為、魔法陣から体を避けてしまえば、当たらない。拳銃の銃口と同じだ。
その為、魔法固定砲台は魔法陣を確認出来れば簡単に避ける事が可能だ。
「魔法固定砲台は扱える者は少ないけど、使える者が強い訳では無いわ」
「……そうね……でも、これで終わり」
魔法陣に圧縮してい光が放出される。
ドレアは避ける動作は無く、直撃した。
「愛花、やったの?」
「……分からない」
辺りには砂埃が舞いドレアの姿が見えない。そんな状況で美咲は愛花にドレアを倒した確認を取る。しかし、愛花も美咲と同じく分からない状況だ。
武器を手に取り、相手を倒す様な戦闘ではなく、魔法固定砲台から放った攻撃は相手を倒しても実感は出来ない。その為、二人は砂埃が収まるのを待つことにした。
砂埃が収まると何食わぬ顔でドレアはそこに立ち尽くす。
「直撃したはずなのに」
「……そうね。でも、直撃したら必ず倒せると言う考えは止めたほうが良いわよ」
「まさか、幻覚?」
自身の魔法固定砲台が効かなかった為愛花は最も可能のある幻覚を口にする。
ドレアは全く見当違いな台詞に思わず、笑みを溢し笑い出す。
「何が可笑しい?」
急に笑い出すドレアに対して、愛花は強い怒りをぶつける。
「ごめんなさい。でもこれは現実よ。後、魔法陣で防いだ訳でも無いわ」
幻術でも無く、魔法陣で防いだ訳でも無い事が分かり、愛花は分からなくなっていた。そんな中、隣に居る美咲は違った。
「黒魔装:ブラックコート」
美咲はドレアが着ている黒いコートをそう呼んだ。
愛花は聞き覚えの無いその言葉に首を傾げるがドレアは違った。
「そうこれはブラックコート。パラス・スケールが作り出した黒魔武器や黒魔装を賢者の石を利用して錬金術で作ったとされるわ」




