第1025話 黄金聖神槍(ロンギヌス)
日本能力者育成機関の新たな本部を決めるその大会の為、日本至る所で様々な修行等が行われるその頃、全く無関係なロシアで一人の少女が嘆いていた。彼女はエレナ・グレイス、十七才にして、ロシア最強の女と言われているが、現在は全盛期の力は無い。理由は一年前に彼女の体内に宿る神器を奪われた事によって、彼女の力は低下していた。
しかし、彼女は戦場の前線に立っていた。
短髪の銀髪が風に吹かれ、その髪が乱れてもエレナは敵を見つめ続けていた。
体内に宿っていた神器を失い、異能力者から無能力者へとなったエレナは敵からも味方からも恐れされていた。なぜなら、神器を宿して生まれた能力者、異能力者は神器を失った場合、全て死んでいるからだ。エレナが史上初、神器を失っても生き続ける事が出来ている存在である。
そんな彼女は生命力が異常であり、敵の攻撃を受けても、傷が出来る事はなく、彼女の一撃は敵の戦力を大幅に削るものとなっており、敵勢力はエレナの姿を見ると決まって、逃走しており、敵が来る度にエレナは戦場の前線に立たされていた。彼女の実力を持ってしても、刃向かう事が出来ない程、ロシアの軍事力は強大であるが、そもそもエレナは自ら望んで前線に立っている。彼女は今日も嘆く。
「黄金聖神槍……何処?」
寝ている間にエレナの体から消えたその神器は最強の聖槍と言われている黄金聖神槍を抱いて常に寝ており、朝起きた時、無くなったと知ったエレナは暴走し、ロシア軍と激突する事になる。その事件後、エレナはロシア軍の近衛騎士団へ入団することなって、こうして戦場の前線に任されている。
「エレナさん。お話が」
青髪のその男、アレクセイ・クロニクルは膝をつき、エレナに話しかける。
「……何?」
「ロシア近衛騎士団複合能力部隊部隊長アレクセイ・クロニクルが確かな情報から得た事柄を報告致します。エレナさんが所有していた黄金聖神槍を体に宿したチーム[パンドラ]の十鬼シリーズの一体神魔が日本に居るそうです」
「……直ぐに出る」
「えっ?」
エレナは直ぐ様、近衛騎士団の本部へと向かい走り出す。
「アレクセイ様。どうしますか?」
「行くぞ、ゲルマン」
アレクセイは近衛騎士団複合能力部隊副部隊長のゲルマン共に、ロシア近衛騎士団の本部へと向かう。
「……貴方達、何か言う事はあるかしら?」
近衛騎士団の本部へ到着したアレクセイとゲルマンを待っていたのは、金髪を髪をなびかせていた近衛騎士団副隊長ミーシャ・ガガーリンだった。