第1024話 強さを
仁と碧人の二人は再び、山梨支部の防衛局へと訪れていた。
「何か、あった様だね」
エンマは防衛局の前で何故か待っていた。
「……まるで俺達が来る事を知っていたみたいだな」
「炎が見えたからね。助けに向かおうと思って居たんだが、二人がこっち向かってきていると、分かって待機していたんだ……それで、用件は?」
「……修行をつけて貰いに来た。文句あるか?」
「いや、全く無いな。本部決定戦で敗北してから、頼まれると思ったが、早いに越した事は無い。早速、二人の修行を始めよう」
エンマは二人を防衛局の特別訓練室へと案内する。
「ここなら、気にせずに暴れる事が出来る。まずは碧人の修行からだけど、君の異能の覚醒はまだ一つだ。異能は所有者の思いに応じて、幾つもの覚醒を遂げる。一つでは心持たない。本部決定戦までに少なくてももう一つは会得してもらう」
「はい」
「では、これはヒントだ」
エンマは燃え続ける氷の塊を碧人に手渡す。それを手にした時、碧人は思わず、それを放り投げた。
「熱っ」
あまりの熱さに碧人は燃え続ける氷の塊を投げていた。しかし、エンマは何事もない様に持っていた。エンマが手渡した燃え続ける氷の塊はかつて、檜山家の者と上原家の者と戦いの際にその場に残されて居たものである。
「ヒントはそれだけあれば十分の筈だ。君なら、それが何で、何をしたかったのか、分かる筈だ」
碧人は落ちている燃え続ける氷の塊を眺め理解する。
「覚醒を最低でも一つと言う話ですが、二つ行けます」
「では、任せるよ。仁君の修行は君の忍耐力にかかっている。それでもやるかい?」
エンマのその言葉を受け、仁は右手を紅色の炎を包ませる。
「さっさとしろ」
「……悪いが、戦闘はしない。本部決定戦に封魔が現れると言う話だが、封魔の体は木山可憐のものだ。封魔を倒す事が出来れば、お前の記憶と本来の能力が戻ってくる」
「本来だと?」
「そうだ。木山廉も異能が降炎魔神剣から複数の魔武器の創造をする炎神の魔武器へと変化した。仁お前も紅蓮業火から紅蓮の炎へと変化している。本来の力を戻す前に完璧に炎の使い方をマスターしてもらう」
「どうすれば、良い?」
「君に渡した剣だ」
「剣?」
「あの剣は炎と同調する特性があると言った筈だ。紅蓮の炎と紅蓮魔剣を同調し、同化させる修行だ。成功させる事に成功すれば、今まで以上の力を手に入れる事に成功するだろう。やるのかい?」
「当たり前だ」
仁は紅蓮魔剣を取り出すと、紅蓮の炎を纏わせる。