第1021話 対話
東京本部のとある病院で繰り広げられる戦いが終わり、ここ山梨支部の防衛局にチーム[クリムゾン]はとある人物に呼ばれ、やって来た。
「仁に兄貴が居るなんて知らなかったよ」
防衛局に訪れて、最初に口を開いたのはチーム[クリムゾン]の副リーダー石原碧人だった。
「俺も知らなかったよ。俺も、木山も木山可憐に記憶を消されているらしい」
「どんな人何だろう」
「待ってれば、分かるだろ」
チーム[クリムゾン]のリーダー、檜山仁副リーダーの石原碧人、メンバーの五十嵐京介、メンバーのデューク・クラークの四人は防衛局の待合室でその人物を待ち続けた。
「済まない。待たせて」
ドアを開けて、入って来たのは仁の実の兄、檜山エンマだった。
「……どことなく、仁に似ている」
「石原家の血筋の者だね。見ただけでも、理解出来る。仁をこれからも宜しく頼むよ。ここに呼んだのは、仁が本部決定戦の説明会に来なかったから、説明を頼まれたのと、これを渡す為だ」
エンマは仁に紅蓮魔剣を手渡す。
その剣は檜山の家宝とされている剣である。
「この剣は木山正平が持っていた奴だな」
「そうだ。返して貰った。この紅蓮魔剣は切り付けた箇所を焼く単純なものだが、最大の特徴は炎に同調して、取り込む特性を持っている。この剣は仁に任せるよ」
仁は無言のまま、紅蓮魔剣を手にする。
「それから、チーム[クリムゾン]の二人、仁と石原君の二人は本部決定戦に参加してもらう。ルールについては細かいのが幾つかあるけど、今回は説明をしなければいけない重要な箇所だけにするよ。と、言っても一つだけ、殺しは禁止だ。仁、今の実力は分からないが、望むなら、修行をつける事の可能だけど」
エンマのその提案に仁は何も答える事なく、その場を後にする。そんな、仁に続きデューク、五十嵐の二人もその場を後にしたが、碧人だけは留まっていた。
「君は行かないのかい?」
「貴方は仁の兄貴だと言うのは、今のやり取りだけで理解出来ました。本部決定戦の説明を聞くのが嫌な仁に対して、仁がここから立ち去る様に修行の話へ移行した」
「……記憶が無くなる前はもっと素直だったんだけどね」
「どうすれば、記憶を取り戻せるのですか?」
「本部決定戦の三回戦目に封魔と呼ばれる鬼が現れるそうだ。直接聞いた話では無いが、信用出来る筋からの情報だからね。だから、三回戦目には自ら出て、記憶を取り戻すよ。兄としてね」
「……」
「分かっているよ。仁も一緒に出場させる。自身の事に他人が関与すると、嫌がるからね」
「……助かります」