第1006話 廉、紫音、勇治
白い翼は病院の屋上へと降り立った。その正体はチーム[雷帝軍]のメンバー明神明だった。
東京本部が送り込んだのは明神たった一人だった。
「……まずは、中に入るかな」
屋上には鬼の様な姿をした者はおらず、誰の邪魔も入ること無く、明神は病院内へと侵入を果たす。
一方、病院の外には[レジスタンス]とチーム[輝き]が戦闘を繰り広げていた。
三チームに分かれた[レジスタンス]の廉、紫音、勇治は斑の仮面を付けた男と対峙していた。
「なんだ、こいつ」
斑の仮面と対峙している廉は素早く動き姿が捕らえる事が出来ない相手に苦戦していた。
「……[レジスタンス]のリーダーともあろう者が一人で突っ込んで行くとは」
三人居るにも関わらず、廉一人で斑の仮面へ戦いを挑んだ事に勇治が愚痴を溢していると隣に立って居た紫音が廉のフォローに回る。
「廉には廉の考えがあるんです」
「……だが、その考えは成功には至っていない様だ」
「それは」
「兎に角、この戦いの肝は君だ!あれほど早く動く動くとここに居る三人の攻撃はまず当たらないだろう。だからこそ、君の氷だ」
「周りに氷を配置して、動くを限定させるんですね」
「そうだ。ただしこちらの三人の動きが制限されるのは不味い。状況に応じて、氷の配置を変える事も重要だ」
「分かりました。廉、三人で連携を取ろう」
紫音に促された事によって、廉は紫音と勇治の元に合流する。
「廉、あの斑の仮面の動きは早すぎる。僕の氷で動きを制限させ、戦う事にしよう」
「あぁ、攻撃が当たる気がしなかった」
「うん。三人居るんだから、協力しよう」
「あぁ」
二人のやり取りを見た勇治は廉へと近づく。
「戦闘に入る前に確認したいのですが」
「……はい?」
「何故、先行して攻撃を行ったのですか?」
「……一人で十分だと思って」
「相手の力量は未知数だった筈、相手の実力は容姿や体格で決まる物ではありません。一人で居るなら、一人でやるしかないです。ですが、三人居るこの状況を把握して下さい。ジークが個人で行動させたのでは無く、二人以上で行動させた意味を[レジスタンス]の総帥として考えて下さい。この提案はジークではなく、本来は総帥である貴方がするべき事では?」
「……反論も出来ません。まだまだ未熟で何が正しいのかも分からないですが、俺は秋人の意思を継ぎたい」
「勿論です。私は[レジスタンス]のメンバーとして、総帥である貴方の考えに賛同し、動くつもりです。人間一人が出来るのは限られています。至らない所や限界があるのは当然です。足りない分は補うのが仲間です」