第1004話 紅桜:ソメイヨシノ式
「紅桜:ソメイヨシノ式これが私の原初の力!」
芽以は剣を一度軽く振るう。
「紅桜:ソメイヨシノ式一ノ型桜津波」
たった一降りで桜の津波を発生させる。舞の眼前には全て桜で埋め尽くされ、分かりやすい程の絶望が舞の目の前で繰り広げられていた。
「……紅桜:不知火型:桜吹雪」
舞は紅桜の攻撃特化型の覚醒により、大量の桜を芽以が出現させた桜の津波へとぶつける。しかし、桜の津波の規模があまりにも大きく、舞の放った一撃は桜の津波へと呑み込まれていく。
「……この程度を退けられない様では認められないわ」
「春様それはこの一撃を止める事が出来たら、認めるって事?」
「そうね。限定的にね」
舞は天高くまで届く桜の津波をどう対処するのか考えていた。
「今の私の最高の桜吹雪でも無理なら、これしか無い!」
舞は紅桜を構えると、
「紅桜:雲龍型:桜流し」
紅桜の防御型の覚醒は津波の様に押し避ける桜をはね飛ばし、舞には一切当たる事は無かった。
「防御型の覚醒ですね。春さん、あれをどう見ますか?」
「見た通りよ。愛、相手の攻撃に合わせて、紅桜から桜を飛ばし、相殺しているのよ」
「同じ形状の桜の花びらだからこそ、上手く出来ますね。大きさが大きければ、桜の花びらの枚数も変化しますから」
「そうとも言えないわ。桜津波を相殺出来る程の桜の花びらを一瞬で出せれば、問題無いわ。まあ、同じ紅桜なんだから、出せる桜の花びらも同じ、桜津波で一瞬で出た桜の花びらに驚きながらも、対応した舞も見事ね」
「春さんが素直に誉めるなんて、珍しいですね」
「誉めてないわ」
芽以の一撃を退いた舞は無傷で立ち尽くしていた。
そんな舞を見た芽以は一度微笑むと、春の方へ顔を向ける。
「……良いわ。認める。貴女の力だけね」
「はい!」
芽以はゆっくりと舞に近づきながら、紅桜を消滅させ、舞の手を取っていた。
「原初の力の一割だけど、私の力を渡すわ」
「……ありがとうございます」
「ここでやる事はないでしょ?行きなさい」
「はい。本当にありがとうございます」
ーーーーーーーーーーーーーー
「……もう戻って来たのか?」
「お兄ちゃん……私どれぐらい」
「一分も経っていない。それで、どうだ?」
「上手くいったよ。原初の一部の力だけだけど」
「十分だ。だが、今回はやるとしても、サポートだけだ。メインは俺がやる」
「敵の力がどれだけのものなのか分からないんだよ」
「だとしてもだ。今回は俺がやるその為に、九十九家で訓練を積んできた」