第1003話 紅桜との対話
川上玲奈が入院するその病院内に侵入を果たしたチーム[マスク]は副リーダーである鬼の仮面が指揮を取り、川上舞を拐う事を目的として、動いていた。
「お母さん、落ち着いて」
舞は昏睡状態が続いていた玲奈が無理に起き上がろうとするのを必死に止めていた。
「チーム[マスク]なんでしょ?一夜!」
「母さん、舞の言う通り、落ち着いてよ。ここに俺が存在する限り、奴等は何も出来ねぇ。先ずは、舞!」
一夜のその声に玲奈を押さえつけていた舞は驚いていた。
「……もう本来の異能である紅桜になっているんだろ?」
「うん」
「だったら、神器との対話をして、原初の力を得られる様にしておけ!」
「……分かった」
舞は覚悟を決めると、体内に宿る紅桜を出現させると、目を閉じ、紅桜へと寄り添う。
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紅桜のその世界は桜が所々に咲き誇っていた。
「……久しぶりに来たわね。川上家の恥さらし」
「お久しぶりです。春さん」
舞は目の前で対峙する桜があしらわれた着物を着た黒髪の女性に警戒心を剥き出しにしていた。
「皆様はどちらに?」
「二人は貴女の後ろよ」
舞の後ろには赤髪の女性と青髪の女性が立って居た。舞の目の前に立つ春はゆっくりと、舞へと近づいていく。
「紅桜の原初の力を引き出す事は、私が認めるまで貴女には使わせないわ」
「……ずっと、思っていたんですけど、春さんってお母さんに似ている……もしかして」
「そう言う意味では、貴女にも似ている筈よ。私は川上家の創設者の一人、川上春なのだから」
「川上家の人間だったのですか」
「今は関係の無い事よ。私は今回は見させて貰うわ。芽以貴女が相手しなさい」
春のその言葉に赤髪の女性が動き出す。
「……この精神世界では、いつも貴女と春様が戦っていて、つまらなかったわ。でも、今回は楽しめそう」
芽以はいつもの間にか紅桜を手にしていた。
「紅桜」
「そうよ。貴女の前の適合者は私だったの。ちなみに私も原初の力を手にするのには苦労したわ。貴女は春様に認められるかしら?」
「その為に来ました。このままじゃ私は足手まといだから」
「……力を求める理由は人それぞれ。貴女のそれも正解の1つ。否定はしないわ、でも今のままでは無理よ」
芽以は紅桜を構えると、そこから黒いオーラを放出させる。
「……覚醒」
「そうよ。私も使ったら?」
「私は原初の力を手に入れる」
芽以の紅桜には何の変化も無かった。
「……」
「感じるのね。この強さを」
紅桜は形状の変化はせずに、本来の力を解放していた。