第1000話 解き放つ者
「……どうやら、ここに残る者は俺とジークの二人だけだな」
「ブリュンヒルデ、いつまで、クラディウス・マークデウルの体で居るつもりだ?」
「命令だ。アメリカ軍に所属しなかったジークの処理は簡単に出来ると、考えている。ここで生き延びても、また刺客がやってくる。生き延びる事が出来るか?」
「生きるよ。ここで生かしてくれた者達に報いる為にも」
「ジーク、困難な道ばかりをゆく、その先に何がある?」
「未来が」
「未来?ジークの未来か……ジーク君は君の人生は何だ?苦難を乗り越える事か?強さを求める事か?」
「僕の人生は積み重ねる事だ。苦しみも、悲しみも、楽しさも、全て積み重ねた先にある。ブリュンヒルデ、嫌、ワルキューレ達の苦しみはここで僕が解き放とう!」
ジークは深くため息をつくと、何も手にしていなかった左手をつき出す。
「受注生産は僕が望む物を造る、しかし、それでは足りない。だからこそ、この能力向上を使用する。受注生産の能力向上は最終生産一日一回のみ発動出来る能力。最終生産を使えば、一度だけ、死の事実も変更、あらゆる物、あらゆる状況、全てを産み出す事が可能となる。僕はこの能力でこの能力で造れる最強の聖剣を造り出す」
「ここで、聖剣を作って何になる?意味の分からない事を言うな」
ジークは背負っていた黒棺を地面へと置くと、黒棺の中から大量の魂を最終生産で造り出した聖剣へと注ぎ込む。
「まさか、魂を切断する聖剣?。ワルキューレ達である者でさせ触れる事も出現させる事も不可能と言われた代物を産み出そうと言うのか?」
最終生産で造られた聖剣の中には、ジークの故郷の人間、ラインハルトの影と共に奪われた魂等、ジークと共に居た仲間の魂約五万の魂が注がれる。
「どれだけの魂を管理していた、それにこれだけの魂を一つも漏らさずに、注ぎ込むとは何と言う技量だ」
全ての魂が最終生産によって造られた聖剣へと注がれると、その聖剣の輝きは青白く輝き始めた。
「……完成したのか?」
「これこそ、魂を切断する聖剣だ!」
ジークは魂を切断する聖剣の中にヘラクレス・リックマン、九十九五三六の魂が混在している事を確認すると、右手に持った魔帝神剣と共に左手に持った魂を切断する聖剣をクラディウスの体を得たブリュンヒルデに向ける。
「……見せて貰おうか。魂を切断する聖剣の力を」
クラディウスの体を得たブリュンヒルデは勢い良く、ジークの元へと走り出す。ジークはその動きに合わせて、動き出す。