第100話 肩に乗るケルベロス
「次はチーム[チャレンジャー]のメンバー麻倉竜一君」
「宜しくお願いします」
黒髪に……特に何の特徴もない男だな。
しかし、北海道では有名なのかも、チーム[チャレンジャー]に所属してるし……紫音も知らなそうだ。
「紫音、知ってるか?」
「嫌、聞いた事の無い名前だ」
紫音が知らないのなら、俺が分かる訳も無い。
「次は加藤彩美さん」
「はい。……宜しく……お願いします」
ギャルだ。短い金髪に色白な肌。制服を着崩して、メイクも濃い。
この女はチーム[チャレンジャー]の一員では無いみたい。
「それじゃ、後ろの席に座って」
先生の指示通りに北海道支部の人間は用意された机に座る。
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「元気無いね」
「そうか?」
元気が無いか?
……周りが騒がしい。俺の後ろには神田翔が座っている。
クラス中の女子達は神田翔を囲み、うるさい限りだ。
午後からは俺は神田翔と戦わないといけない。
女子達のうるささも気になるが……俺が気になるのはケルベロスだけだ。
チーム[チャレンジャー]の二人は話していて、神田翔には近付く様子も無い。
唯一居る女子の加藤だけって、その女子は一人腕と足を組み近づき難い雰囲気が漂う。誰も近づかないだろう。一人の男が近付く。
ガチャン
大きな音にクラスは静けさに包まれた。
加藤の前にあった机が吹き飛ばされている。組んでいた足を戻している所から足で机を蹴り飛ばしみたい。
話をかけた男はゆっくりとその場を後にする。
加藤は机を戻す様子も無く、堂々と座っている。
机は直さないとな、俺は席を立ち動く。
「廉の出番は無いみたい」
紫音は俺と同じく立ち上がっている。出番が無いって……
舞が助けに入ったみたい。
「……紫音、お前もな」
「そうだね」
俺と紫音は舞に任せて席に座る。
舞は終始笑顔で机を直す。
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「はぁぁ」
俺はため息をつく。
「どうかした?」
「調子悪いみたいだね」
食堂に向かう途中で俺の隣に居た舞と紫音は心配そうに声をかけてくれた。
午後からは手合わせとして北海道支部の代表と戦う事になっている。
何だかやる気が出ない。
「なぁ、紫音。神田翔って奴の肩に乗っていたケルベロスだけど」
「あぁ、僕も気になっていた。神田家は雷属性の魔法を扱う事で有名だけど……あのケルベロスも雷を帯びていてた。もしかしたらあのケルベロスはサポート様に連れているのかもしれない」
「……あのケルベロスさぁ、生きていたよな?」
「あぁ、あのケルベロスには意志がある様に見えた」
「紫音、ケルベロスって想像上の生き物だろう。何で居るんだよ?」
「……分からない。廉……気をつけてくれ」
……紫音の顔色が一瞬で変わった。
肩の上に乗ることが出来る位小さいが、想像上の生き物だ。
北海道支部の代表との戦い、本気でやらないと……俺がヤバい。