目覚め
「ハァハァハァハァ」
もうそこまで、兵士が来てる。
自軍まではまだ一町近くある、このままじゃ逃げ切れない。
「チッ」
「この近くにいたはずだ」
「別れて探すぞ‼」
兵士は、三手に別れて探し始めた。
この建物は大きいから、見つかるまでは時間が掛かる。
その間に逃げ切れれば。
「‼?」
嘘…見つかった。
「見つけっ…」
「ゴキッ」
「ごめんなさい」
首の骨を一捻り、私にはこれが精一杯。
兵士の持ち物を物色する、拳銃一丁に、銃弾三発。
ライフルは、私には使いこなせない。
「ハァハァハァハァ」
廊下には二人の兵士がこちらに向かってきている。
ここは二階だから、落ちたら死にはしなくても音で気付かれる。
兵士と私の部屋まで約十丈。
「本当にいるのか?」
「それはわからねぇよ」
「でも隊長が言ったんだから」
「探すんだよ」
「はいはい」
どうする考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ。
思考をフルに使って、今を生きるんだ‼
相手は拳銃しかもってない、ライフルなら撃ち合いに勝てる。
でも、私じゃ使いこなせない。
どうする?
「ビリッビリビリ」
服をぐちゃぐちゃに破いた。
「イヤァーーーーー」
よしっ‼
足音がこちらに向かってきてる。
「民間人だ‼」
「大丈夫ですか?」
「平気です」
「でも」
私は、兵士の死体を指差した。
「そんな」
「誰がやったか見てましたか?」
「いいえ」
「役に立てずにすいません」
「この建物から出ましょう」
「はい…」
ナイフは二本ある、これで一気に頭を刺す。
「そういえっ…」
「ハァーーー」
深いため息を一つ吐いた。
「カチャッ」
「‼?」
後頭部にひんやりと冷たい感触が広がる。
「お前が全部やったのか?」
背中には大きな、鷹の刺繍の入っている。
後ろから近付いてきたのさえ分からなかった。
これが隊長クラス。
「そうよ」
「全部私がやった」
「そうか」
「グッ」
ナイフを強く握りしめ、男の膝向かって降り下ろす。
「グサッ」
当たった。
男が怯んでるうちに、距離を空ける。
「‼?」
拳銃の銃口は私に向いていた。
「死ねぇーーーーーーー‼」
「バンッバンッバンッバンッ」
私は咄嗟に、床に伏せた。
「バンッ」
拳銃を男の頭に向かって撃つ。
「ダッダッダッダッ」
男は銃弾を避けもせずに、突進してきた。
片手に手榴弾を持ちながら。
「‼?」
「ドンッ」
床は崩れ落ち、窓ガラスは割れた。
男は上半身を失い、下半身だけが下の階に転がっていた。
「助かったの…」
「早くキャンプに戻らないと」
足早に建物から去る。
町の中は酷い有り様だった。
そこらじゅうに兵士の死体が転がり。
瓦礫のやまが幾つも並んでいる、建物は原型をとどめることもできなくなっていた。
「ダッダッダッダッ」
必死に走る。
キャンプで負傷者を治療しなければ。
私の名前は、戦場の天使。
ナイチンゲール。