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「勘違いですれ違った恋」番外編  作者: 柏木紗月
新婚生活スタート
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マイホーム


「隼人はとっても絵が上手なのよー見せてあげるー」


 お義母さんがそう言って隼人さんを見る。なんの反応もしない隼人さんにお義母さんが言う。


「ほら隼人早くー!!」

「え、なんだ、なんか持ってくるのかと思った。じゃあパンダうさぎ「は良いんじゃないかな」……そう?」

「パンダうさぎの話は1日かかっちゃうんでしょ。お家の絵はどう?」

「うん、良いよ」


 ほっとする。お母さんとお父さんの前で不思議なパンダうさぎの話をされたら恥ずかしいしなんとも言えない気持ちになる。食事はみんな終わっていて食器をキッチンに持っていったり端に避けたりしてる間に隼人さんは鞄からこっちは美織の、こっちが家と確認しながら出してテーブルに家の外観の絵を広げた。

 その瞬間思った通りお父さんが飛び上がる。


「すごいすごーい!!綺麗な家だね!!わー!!」

「プロが描いたみたいねー」

「これどうしたの?」

「マイホーム!!」


 お義父さんの問いかけに若菜が叫ぶ。


「あらあら、素敵なおうちねー」

「涼子さん、要さん、この子たち4人で住みたいんですって」

「あら良いわねー」

「楽しそうだね!!」

「けど隼人と昴はずっとはんたーいって言ってたのよー」

「こうやって玄関とか分けて共有部分を作るってことなら良いってなったんだよ」


 隼人さんの隣に座っていた昴くんがもう一枚の家の中が描かれた方の画用紙を広げる。


「ここは最初は隠し扉か暗証番号扉だった!!椿が取っ払ってくれたよ!!」

「と、取っ払ったつもりじゃなくてこうしたら良いんじゃないかなーって思っただけ」

「このへなちょこな絵は椿ね?せっかく綺麗な絵なのに」

「仕方ないでしょ。わかれば良いの」

「このリビングで私と椿が一緒に過ごすの!!ホームシアターだよー!!椿がここで映画見たいってー!!」

「椿……あなたこんな素敵な家でも実家と同じようにだらだらゴロゴロするつもり?」

「そ、そんなことないよ」

「本当かなー。絶対ここのソファーから動かないよ。実家にいた時はお父さんお菓子ーお母さんご飯まだーってやってた」

「し、しないよ大丈夫だよ」


 お母さんとお父さんに絶対やるって言われて否定する。


「あ、そうだ。ここのリビングは良いけど他の俺と椿の陣地に若菜が入ってこないようにセキュリティを入れよう」


 隼人さんが鞄からペンを取り出して色んな扉にセキュリティの機械みたいなものを書き足していく。


「その暗証番号は0316にしよー。椿の誕生日」

「誕生日暗証番号にしたら駄目だよ若菜。僕たち4人の好きな数字とかにしたら?」

「暗証番号式じゃ駄目だ。指紋認証にして俺と椿だけにしなきゃ」

「ちょ、ちょっと……行き来自由で良いでしょ」


 私たちのやり取りにみんなが笑う。


「良いわねー楽しそー!!やっぱり私たちも一緒にすれば良かったー」

「何回も話し合いしたよね……」

「パパの裏切り者ー」

「僕たちは断固反対だったよ。こんな風に考えなかったね」

「これなら俺の帰りが遅くても出張でも椿が寂しくないからね」

「あら、甘やかさないように言ったのに隼人くんはやっぱり優しいのね」

「こういう形でくるなんてすごいなー」

「先週ので思いました。子供が生まれて椿1人じゃなくても子供たちも一緒に寂しがっていたらやっぱり仕事どころじゃなくなるって」

「僕も仕事場に美香と隼人つれていきたかったよー」

「止めてくれて良かったよ」

「じゃあやっぱりセキュリティ必要ないよーいつでも会えるようにしないと意味ないもーん」

「じゃあこの辺りに防犯カメラを設置して若菜を監視しよう」

「それは単なる嫌がらせだよ。外につけなよ、防犯にならないじゃん」

「内の敵の方が厄介」

「えっと、防犯対策は必要だねー」

「ここに落とし穴を作ろー」

「そんな余計なもの書き足すなよ。俺たちが入れないだろうが」

「じゃあお庭を迷路にしよう」

「僕たちが家に入るのに苦労するから止めて」

「あ、でもプールがあるんだもん、広いお庭なら迷路があっても面白いね」

「椿ちゃんプール却下だって隼人くんが」

「あ、そうだった」

「そんなにプールが良いなら温泉は無理でもプールは作ってみる?」

「ううん、良いの良いの。海外ドラマのセレブのお家にプールあるなーって思ってたら混ざっちゃって。今日の朝もこういうのどうってたくさん言ったし」

「ほら、ぐちゃぐちゃ言うからわけわからなくなっただろ」

「私がわかるよー温泉はなーし、プールはありー、滑り台はありーメリーゴーランドはなしー屋台はありー」

「屋台はなしだよ」

「屋台を庭に作るって意味わからない却下って言ったろ」

「テラスも欲しいわね。白いテーブルに白い椅子」

「あ、優菜さん勝手に描かないでよ」


 優菜さんがペンを持って画用紙に書き足す。


「ティータイムはここね」

「わーなんだかおしゃれですね。さすが優菜さんです!!」

「私たちが泊まる部屋はここかしらねー」

「ちょっと、そんな部屋ないよ!!母さんも勝手に描かないで」


 優菜さんからペンを受け取ったお義母さんも画用紙に書き足す。


「8人同時に泊まるとしてこんな感じかしらねーあ、変になっちゃったわー……要さん描いてー」

「はーい」

「な……まあ良いか」


 お義母さんからペンを受け取ったお父さんがさらさらと書き足す。


「わーすごーい!!」

「子供部屋はどこにあるのー?孫孫ー」

「一輝さんが子供っぽすぎておじいちゃんになる想像ができないんだけど……そもそも別々にしたら一緒に住んでも良いってのを言うためだけに書いたものだからそこまで考えてなかった……こことか?」

「じゃあここにこうするねー」

「良いじゃない。これで私たちも好きな時に泊まって孫とたっぷり遊べるわね」

「そんなに頻繁に来ないでよね」

「あら、涼子さんも遊びに行きたいわよね」

「そうねー」

「でもこれを実現するのは難しいんだよね」

「普通の二世帯住宅でもこれくらいかかって色々言ったやつを盛り込むとしたらもっと高いんだよ」

「どっちかが仕事を辞めて引っ越さないといけないっていうのもあるし僕辞めたら琉依さん困るでしょ」

「それは困っちゃうんだけどね。んー……でもお金なら僕も出すよ」

「え、良いよ、俺たちでどうにかするよ」

「少し足しにしてくれれば良いよ。若菜が心配だったから結婚したら渡そうと思ってた貯金があるし」

「うちもどうせ若菜は料理しないし昴は仕事に追われて帰り遅いだろうと思って積み立ててたし案の定すごい生活してるものね」

「うちもそうだよ。元々渡すつもりだったんだから渡して良いでしょ」

「昴、これはもらうのが普通?」

「うーん……うん。ありがとうみんな」

「そっか。じゃあ使わせてもらうね。ありがとう」

「私料理するって椿と約束したよ!!」

「若菜本当?私みたいに親子丼作れる?」

「親子丼もなんでも作る!!」

「偉いわねー若菜」

「うん!!ありがとーみんな遊びに来てねー」

「椿にはこの前渡したでしょ。毎月少しずつだったから本当に足しにしかならないけど」

「うん、ありがとう。……でも」

「椿、これで仕事続けなきゃって考えなくて良いよ。合わせてどれくらいになるかわからないけどこれで普通に自分たちの収入とローンも組めば何年か経てば目処が立つよ。ちゃんと計算して考えるから」

「えっと、でもみんなお金を出してくれると余計に私が働かないのはちょっと……」


 辞めようと決めた。だけど状況は数日経つだけでもこうやって変わってくるんだからせっかく決めた決意も揺らいでしまう。辞めて隼人さんの帰りを待ちたい気持ちには変わりないけどやっぱり隼人さんは口では私が仕事を辞めることより続けるように勧めてくれる。私のためだと思うからこそ複雑。


「そういえばこの前も若菜が隼人に怒られたって言ってたわね。椿ちゃんが仕事を辞めてこっちに戻ってきて隼人が単身赴任すれば良いって言ったら椿ちゃんは仕事辞めないって」

「俺はどっちでも良いって言ってるの。椿は仕事好きだから辞めなくて良いけどこういう理由で仕事を続けなくちゃいけないってなったら椿責任感が強いから根詰めちゃうでしょ」

「本当に隼人くんは優しいんだねー」

「こうやって言ってもらえるなんてなかなかないわよ。私はお父さんの仕事は不安定だからパートでも働き続けないといけなかったけど」

「別にすぐ決めないといけないってわけじゃないんだから椿の好きに考えてみたら?」

「んー……」

「ほら椿、考えるのは考えるけどもっと楽に考えたら?いつもいつも難しくぐちゃぐちゃ考えるからおかしなことになるのよ。そう、椿は1つのことに集中するのが得意なんだから仕事して家事もしてっていうより家事だけした方が良いんじゃない?隼人くんもそういうことなら仕事を辞めるって決断しても良いのよね?」

「はい。すみません、無茶苦茶なことを言って。椿がしたいことなら良いんです」

「専業主婦になるって言ってもなにしたら良いのかわからないから不安にもなるかもしれないわねー」

「私が教えてあげるわよー」

「まあ美香だと琉依兄に付き添ってパーティーに出たりとかちょっと変わってるけど私なら参考になるかもしれないわ」

「でもそれだと辞める方向に寄ってしまうわよね。優菜と美香が家事手伝ってくれてたって違いがあるけど私なら椿ちゃんと同じ正社員で働いてるし相談に乗れるかもしれないからなんでも聞いてね」

「美香さんも優菜さんも彩華さんもありがとうございます。んー……」


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