なぜか両親の馴れ初め
びっくり。彩華さんが働いている職場ってお母さんがパートを始める前まで正社員で働いてた会社だったみたい。お母さんが昔働いてた会社名聞いたことなかったけどこんな偶然があるんだ。
「でもお母さん、結城昴くんって知ってたんだからピンとくるんじゃないの?」
「部署が違って接点は全然なかったのよ。私が退職する日に偶然入社してすぐの彩華さんに会って少しだけ話しただけ。それに結城さんってよくいる名前じゃないけど小学校にも中学校にも同じクラスに結城さんって子いたじゃない」
「わー偶然ねー!!」
「本当に。こんな形で再会するとは思いませんでした」
「すごーい!!なんだか運命的ー!!」
「母さん煩いよ。なんで彩華さん……昴の家と運命的なことに……」
「隼人さん、ただの偶然だよ」
隼人さんは私が大好きだから昴くんの家とうちの家の偶然な繋がりにモヤモヤしてると読んだ私は隼人さんに声をかける。
「そもそも彩華さんが働いてる会社のことなんて知らなかった」
「隼人知らなかった?」
「うん。昴知ってた?」
「え、うん。だって親の職場とか書くし」
「私知らなーい。パパのは書くけどー」
「書類に書くから親の会社しか知らなかったみたいだね」
「パートを始めたのって私が幼稚園の時とかだっけ?今の職場は書くからわかるけど前の会社は知らなかったー。お母さん、なんの会社なの?」
「イベント会社よ。いろんな部署があってね。彩華さんは今どこ?」
「私はビジネス用品の展示会をしてる部署に。えっと……」
「涼子で良いわよー」
「涼子さんはファミリー向けのイベントの広報をしてましたよね」
「よく覚えてるわねーそうなのよ」
「同い年の子供がいるって、私は復帰して涼子さんは辞めてって逆だなって。他の部署のみんなからもたくさんの花束をもらって明るく挨拶しながら辞める涼子さんがすごくかっこいいなって思いました」
「ほら聞いた椿、お母さんはかっこいいって」
「なんか不思議ー」
「手のかかるお子さんだからっておっしゃってましたけど椿ちゃんじゃ全然そんなことなかったんじゃないですか?」
「違うのよ、手のかかることこの上なかったわ。保育園に通わせたらお母さんが良いってなかなか行ってくれなくて。そういう子は多いって聞いたからお友だちと過ごすのが楽しくなればぐずらなくなるかと思ったけど毎日ずっと変わらなくてね。お父さんは仕事フリーだからセーブしようかって話になったんだけどスケジュールは埋まっててどうしても難しいしお父さんじゃなくてお母さんが良いって。保育園が駄目なのかって幼稚園に通わせてみたんだけどバスで送り迎えが嫌とかお母さんも一緒なら良いとかで、この際だから朝は遅くからで早く終わるパートの仕事を探してした方が良いって思ったのよ。ほら椿、あなたは昔も今も変わらないでしょ」
「そんなはず……そうだった?」
「お母さんがいないと寂しいって一緒に来てーって毎朝大騒ぎだったのよ」
「そうだったかなあ……」
「椿可愛すぎる」
「寂しがりやさんだったのねー椿ちゃん可愛いー」
さすがにそんな小さな時の記憶なんてない。
「隼人と若菜から要さんはフリーのグリーンコーディネーターをしていると聞いてますよ」
「なんだかよくわからないですよね。僕の場合はショッピングモールとかの商業施設とかオフィスとか個人のお家の庭とかもういろいろです」
「ピンポーン!!涼子さんはショッピングモールで要さんに会ったのね!!」
「ピンポンピンポーン!!優菜さん正解!!」
「わー!!優菜すごーい!!」
「なぜこのノリに躊躇なく乗れるんだろ……」
「隼人さん、それはうちのお母さんだからだよ」
答えになってないけどとりあえず言ってみると隼人さんは若菜を見て、ああ……って納得したみたい。なんでだろう。
「お子さまの若菜に迷いなく付き合えるからね」
「む!!お子さまじゃないよ!!」
「あ、若菜暴れちゃ駄目だよ」
喧嘩が始まっちゃうと思ってまえのめりになってる若菜を宥める。
「恋バナ聞きたーい」
「良いわねー。私も聞きたい!!涼子さんお願い!!」
「ふふ、良いわよ。27才の時部署が変わってファミリー向けのイベントに携わることになってね。それが決まってから異動前にどんなことをしてるのか実際に見てみたいなって思っていたらちょうど私の家の近くのショッピングモールでヒーローショーをしてるって教えてもらって行ったの。そしたら大勢の子供たちとお母さんお父さんたちの中に明らかに怪しいキャップとサングラスとマスクを身に付けてる人がいてね、絶対怪しい、子供たちを守らなきゃって思ってじっとその人のことを見てたんだけど結局ショーが終わるまでなにもしなかったからなにをしていたんだろうって気になってショーが終わってすぐに去っていったその人を追いかけたの。ベンチに座っていたから隣に座って何してたんですかって聞いたのよ」
「わかったー!!要さんだー!!」
「要さん以外の誰がいるのよ本当馬鹿なんだから」
「今馴れ初めを聞いてるんじゃないの……そもそも顔合わせでどうして本人たちのじゃない馴れ初め話になるんだろ」
私も隼人さんと同じように思う。どうして私と隼人さんの話じゃなくて私の両親の馴れ初めを聞くことになってしまったんだろう。
「そう、その人はお父さんでね、いきなり来ていきなり質問してきた私に普通に答えたの。僕が作ったものを見ていただけだよって。関係者だったのかって慌てて不躾なことを言ってすみませんって謝ったらなんかすごい見てくる人がいるなーって思ったって言われて。恥ずかしくなって関係者なら関係者だってわかるようにワッペンでもつけておいてくださいって怒ったら自分が関わったものを見る人の視点で見るのが好きなんだって。それで教えてくれたの。目立つわけじゃないし気にかけられることも少なくて印象にも残らないかもしれないけど自分のやったことがどんな風に見えるのか見るのが好きなんだって。確かに植物なんて気にしてもいなかったわって呟いたら笑われて。カチンときたから芸術に縁遠くて全然わからないんですよって怒ったらあなたは綺麗なものが嫌いなのってさっきと変わらない調子で言われて綺麗なものは普通に綺麗だなー素敵だなーって思いますけどって答えたらそれだけで良いんだよ、じゃあ来週一緒に見に行こうって言われてなにがどうしてそうなるのかわけがわからなかった。でも実際に2人で植物園、公園、美術館……なんだかんだで何度もいろんな所に行って、お父さんが携わった場所にもついていったりして、落ち着いてる人かと思ったら綺麗なものを見て子供みたいにはしゃいだりするこの人のことが好きだなって思ったわ。芸術のことはやっぱりよくわからないままだったけどただ綺麗だな素敵だなって思うし、この人が作るものは冷静できちっとして見えるものもあるし無邪気にはしゃいでるように見えるものもあるし見ているだけでワクワクしちゃうって思った。なんだかこの人みたいだって。何度も誘ってくれるけど私のことどう思ってるんだろう、どういうつもりなんだろうって思っていたある日いつも通り公園に行った帰り道でどういうつもりなのって聞いてみたの。そしたら付き合ってるんじゃなかったのって言われて、あーこの人だものねって思って、誘いに乗ってくれてたから僕のことが好きなんだと思ってたんだけど違ったのって言われて答えたの。好きよ、あなたが作り出す芸術もあなた自身も好き、よくわからないけどねって。そしたらわからなくても好きなだけで良いよ、じゃあ結婚しようかって。本当に意味わからない。それが出会ってから1年後のことだったわ」
「なんだか素敵な話というか不思議な感じー芸術家が登場人物だと恋バナも一味違うのね」
「そんなことないわよ。普通の恋バナ」
「なんだか穏やかーな感じー!!」
「ふわっバーンひらひらっピヨピヨピヨピヨーって感じだね椿」
「そうだね、両親の馴れ初め聞いたことなかった」
「ちょっと椿、俺の考えてることはわからないのに若菜の意味不明な言語は理解できるの?」
「わからないけどなんとなくだよ」
「不思議だけど感性が違うのかしら。涼子さんも一緒に過ごしているうちに要さんの不思議なペースに馴染んでいったんですね」
「彩華さん彩華さん違います。母は父に怒ってばかりです。私にも怒ってばかりです」
「あなたたちが怒らせることをするからでしょうが」
「してないよーでも怒ってるってわかるからすぐ謝るでしょ」
「謝れば良いってものじゃないって言ってるでしょ」
「そうだよ椿。椿はお母さんに似てじっと何かに集中したら周りが見えなくなっちゃうから気を付けてよ。じゃなきゃイベント見に来たのに目的果たさないで違うことで頭がいっぱいになっちゃうよ」
「なにもしてないのに注意しないで!!」
「あなたが紛らわしいのが悪いのよ!!」
「ま、まあまあ3人とも落ち着いて」
「素敵なお話でした。今度うちの話も聞いてください」
「ぜひぜひ。聞かせてください」
「うちは9人もいるのに芸術関係っていなかったわね」
「隼人が絵上手だよ」
「隼人は例外なくなんでもできるものね」
まずい、彩華さんの言葉でお父さんの目が輝いた。




