話し合い二回目
「つばきー!!」
「若菜ーこの前ぶ……り」
若菜と昴くんの家についた私と隼人さん。出迎えてくれた若菜が私に抱きつこうとしたけど隼人さんが私の肩を抱いた。
「む!!邪魔なはや……もふもふ!!」
「隼人くんそれ抱えてここまで来たの?」
「そうだけど?可愛いでしょ」
「うん……とりあえず2人ともあがってよ」
「お邪魔します」
家に上がらせてもらうと隼人さんは目につくものになんだこの招き猫はとかなんだこの和食の店にあるような暖簾はとか言いながらリビングに入る。
「なんだこのショッキングピンクのカーペットは。統一感のとの字もないな。ここはよろず屋か。なんだこのがらくたの山は」
「えい!!」
「邪魔」
若菜が手にしたピコピコハンマーで隼人さんの頭を叩こうとして隼人さんに手で払われる。
「懐かしいなーあ、こんなものまであるんだね」
「ピンポーン!!パンダうさぎを抱えながら電車に乗った隼人はなんだあいつって目で見られてた」
若菜がクイズ番組に出てくるピンポンって押すやつを押してから言う。
「えっと……ぶっぶーだよ」
「そんな馬鹿な!!ピンポーン!!白い目で見られた!!」
「えっと、ぶっぶー」
「じゃあなに!!」
「かっこかわいいって言われてたよ」
「え、そんなことないよ」
パンダうさぎを撫でながらおもちゃの山を物色していた隼人さんに抗議される。
「隼人さんが気付いてなかっただけだよ。かっこいいのに可愛いって女の子たちが言ってたよ」
「そうなの?」
「隼人くんそれ誰から貰ったの?村岡さん?」
「村岡さんと関さんからだよ」
「そっかそっか。とりあえず隼人くんお風呂入ってきて」
「へ?なんで?」
「一回パンダうさぎ離れて面倒だから」
「昴はいつから冷たくなっちゃったんだろう。あの時かなこの時かな」
「早く行けばーか!!」
「椿は?」
「あーうん……あとで良いよ。隼人さん入って」
「そうなの?じゃあ行くけど。はい、馬鹿な若菜に渡さないでね」
そう言ってパンダうさぎを私に渡してお風呂に行く隼人さん。
「相変わらず馬鹿!!」
「そんなこと言わないで。可愛いんだよパンダうさぎ」
若菜に手を引かれて私はソファーにソファーに座り昴くんがアップルジュースを入れてくれた。
「ありがとう」
「どういたしまして。それ聞いたの?」
「それ?ああ、パンダうさぎが隼人さんにとってすごく重要なものだってことは聞いたよ」
「パンダうさぎは私が言い始めたのに!!」
ここに来る途中ずっと隼人さんのパンダうさぎの話を写真を見せてもらいながら聞いていた。大学生の時私の写真を昴くんに渡していて手元になかった隼人さんは私を探そうと思ってくれたすぐあとにパンダうさぎのイラストをたくさん書いて写真に撮って待ち受けにしていたそうだ。そのイラストがすごく上手くて可愛くてびっくりした。隼人さんは私に会えない間ずっとそのパンダうさぎたちを私だと思って見ていたんだと教えてくれた。確かに若菜に私はパンダうさぎに似ていると言われたけど私イコールパンダうさぎになってしまうなんて。でも私がいない間パンダうさぎが心の支えだったとまで言われてしまったらパンダうさぎはすごいものな気がしてきた。隼人さんはパンダうさぎは隼人さんの人生に欠かせないほど大切なものだから1日中ずっと話していられるって言ってくれたけどここまで来るのに1時間だから打ち切りにさせてもらった。
「まああれをずっと見てたって言われても反応に困るよね」
「う……うん。でも嬉しいのは嬉しいよ。楽しそうで私も話を聞くの楽しかったし」
「変なのって思うよ普通ー」
「変なのとは思わないけど」
「僕だって最初見せられた時どういうことだと思ったよ。もう良いって言ってるのに僕には特別だって全部見せてきて。父さんたちは可愛いじゃんって温かい目で見てたけどね」
「椿はパンダうさぎみたいでパンダうさぎは可愛いから文句に困るー」
「言わなくて良いんじゃないの……?」
「隼人の全部を否定したいのに!!」
「若菜……」
「まあ絵のクオリティーはさすがだよね」
「すごいよね。本当に上手。そういう才能もあるなんてできないことがないみたい」
「あるよ!!椿を悲しませないこと!!」
「え?」
「いつもいつもいーつも椿を泣かせてばっかりだもん!!」
「そんなことないよ。私が悪いんだよ」
「ふん!!違うもん!!浮気!!」
「浮気じゃないって言ったでしょ」
「疑わしいのは罰するの!!ママも言ってたよ!!」
「ゆ、優菜さんもすごく怒ってくれたからね……」
先週みんなからは心配の嵐で隼人さんは怒られてたけど私にはみんな優しく言葉をかけてくれた。優菜さんと若菜は隼人さんの浮気男だとかタクシー乗る前にお店戻れとか言ってた。
「本当にお騒がせしちゃってごめんね」
「気にしないでってば」
「出れなかった悔しいー!!」
「2人で遅くまでお出かけしてたんだから仕方ないよ。大丈夫。ごめんね」
「隼人が帰ってこないなんて万々歳!!私と一緒なら寂しくないよ!!っていうことでー」
「若菜、まだ早いよ。椿ちゃんがお風呂入った……わわっ」
「椿のお風呂想像するな」
「してないよ、面倒だなあ」
いきなり昴くんの頭に横からタオルが飛んできたと思ったら隼人さんが投げたみたい。
「椿、入ってきてね」
「う、うん。喧嘩は駄目だよ?」
「しないよ」
ニコリと笑う隼人さんが少し心配だと思いながら私はお風呂に入りにいく。今のはわかった。けどタオル投げちゃ駄目。喧嘩しなきゃ良いけど……。
シャワーを浴びるだけだからすぐにあがってリビングに戻ると仲良く……たぶん仲良く遊んでるみたい。
「あ!!それは駄目ー!!」
「駄目じゃない」
「若菜、隼人くんに勝つなんて無理だから」
オセロで遊んでるみたいでなんだか面白い。
「はい、これで5連勝。椿、5回お願い聞いてね」
「は?え、なに?この短い時間で5連勝?お願い?」
頭の中にいくつも疑問符が浮かぶ。
「勝ったら椿がなんでもお願い聞いてくれるって決めたんだよ」
「そっかそっか。喧嘩してなかったなら良いや。変なのは駄目だからね」
「変なことしたことないよ」
「私が駄目って言ったら変なことだよ」
「うん、わかった」
さすが隼人さんのことをよくわかってる昴くん、喧嘩しないで気を逸らしたみたい。どんなお願いされるかドキドキするけど。
「じゃーもう良いんだよね!!」
「うん、お待たせしてごめんね」
私たちはローテーブルを囲んで4人で座った。パンダうさぎは隼人さんと私の間に座ってる。
「そしたら僕たちが一緒に住むかどうかの話し合い第二回スタート」
「はいはい!!一緒に住むの!!絶対住むの!!」
「住んでも良いけどこういう家にする」
そう言って隼人さんは一枚の画用紙を広げる。
「あ、間違えた。これは美織の可愛い絵」
「隼人さん……」
「隼人くんが珍しいね。なんかあったの?」
「うん、ちょっと美織ちゃんの成長がね……」
隼人さんは荷物から別の画用紙を持ってきて広げた。そこにはプロの人が書いたみたいな上手な一軒家の外観。
「俺と椿はこっちの玄関、昴と若菜はこっちの玄関だよ」
「どうして玄関が別々ー?」
「玄関はいってらっしゃいといってきますをする場所だから」
「なるほどねー。玄関を別々にすれば隼人くんは一緒に住んでも良い?」
「いや、家の中はこっち」
そう言ってまた別の画用紙を広げる。家の中がすごく綺麗に描かれている。
「こっちが俺と椿の玄関から入ったリビング、そっちが昴と若菜」
「玄関だけじゃないじゃん!!」
「誰が玄関だけって言ったんだよ。リビングも2人でのんびりゆっくりラブラブして過ごす場所だから別々」
「それじゃ同じ家でもなんでもないよ!!」
「見てここ。ここの隠し扉を探し当てられたら行き来して良いよ」
「なんだそれ!!」
「は、隼人さん、これじゃ隣同士に住んでるだけだよ。隠し扉ってどういうことなの……?」
「暗証番号式の方が良い?」
「そういう問題じゃないよ」
「そう?昴は良いでしょ?」
「まあ、お互いの生活スペースを分けてっていうのは良いかも。うん、僕もそういうのなら一緒に住んでも良いかな」
「これじゃ一緒に住んでるって言わないよ!!」
「これが駄目なら一緒に住まない」
「むー!!」
「二世帯住宅みたいにするってことだよね。私も良いと思うなー」
「えー!!これじゃ一緒に住んでないよ!!」
「そうだねー……それぞれ別れてるけど共有スペースを作ったらどう?あ、えっと、これ書いて良い?」
「好きにして良いよ」
「ここは普通に行き来できるようにして、ここを広げて大きめのリビングダイニングにするの。誰かの帰りが遅い時はここで帰ってきた人だけ集まってお喋りしたりしてね、楽しそうだよ。子供が出来たりしたら大勢で集まってゲームしたりして。あ、映画もプロジェクターで観てみる?って、それはやりすぎだね」
「ううん、良いよ」
「それならお風呂も露天風呂を作ろう!!」
「それはやりすぎだよ。……でもいっそプールとか庭にあったらすごいかも」
「セレブみたいだね。けど広いお庭なら家庭菜園とかしてみたいかも」
「ちょっと、ちょっと……なんでもありな家じゃないんだからね?椿の家庭菜園はやりたいようにやってくれれば良いけど」
「えー?全部隼人が出すんでしょ?」
「言ってないよ。いくらなんでも二世帯住宅てきな家を建てるのに俺だけじゃ無理。ほら、新築だとこれくらい。だいたいの金額を調べてみたよ」
「隼人さんすごい。こんなに調べてくれたんだね」
「結局住むにしてもお金がないよね。誰かが仕事を変えるか辞めなきゃ住めないって問題もあるし」
昴くんの言葉でみんな考える。そうだよね、みんなが住むこと自体に納得してもいざ一緒に住もうと思ったら課題はいっぱいある。これでは仕事を辞めると言ってられないかも。隼人さんだってこんな二世帯住宅みたいな家を建てる想定はしてなかっただろうし。辞めると決めたけどそれも一旦振り出しかなあ。
「けど椿、これで仕事を続けなきゃとか考えなくて良いからね。前に言った通り椿の好きにして良いよ。さすがに大浴場だプールだとかじゃ難しいけどいくらでもどうにかするから。俺もこういうのなら椿に寂しい思いもさせないし子供ができても若菜と昴もいたらみんなで協力してできるし。こういうのならむしろメリットの方が多い気がする」
「うん、ありがとう。いろいろ考えてみる」
「仕事?」
「仕事とかいろいろ。自分がどうしたいのかなって」
「椿がそうしたいって思ったことなら否定しないよ。でもそうしなきゃいけないって思ってだったら一緒に考えさせて」
「うん、とりあえず……節約はしておこっか。結婚式とかあるけど値下げしてあるのを買うとか安売りでまとめ買いするとか。私得意だよ」
「じゃあ明日帰ったらそうしよっか」
「僕たちも自炊しよっか、さすがに」
「お前らの食生活はいろいろまずい」
「若菜も親子丼ならできるんじゃない?ちょっとずつ作ってみたら?」
「できなきゃ4人で住む家建てられないからな」
「うう……頑張る。椿と一緒に住むため!!」
「じゃあ僕たちが一緒に住むかどうかの話し合い第二回は一応住む方向で考えるけどいろんな問題をどうにかしないと住めませんってことで終わりだね。この前よりぐだぐだにならずに済んで良かった……」
「昴、あれはどうなってるんだ?」
「ねー椿見て見てー!!」
「え?」
昴くんの終了の言葉でとりあえず話し合いが終わり立ち上がった隼人さんと昴くんが話しはじめてなんだろうと思っていたら若菜が携帯を見せてくれた。隼人さんなんの話だろう。
「見てー!!」
「ご、ごめん。隼人さんが……」
「隼人なんてどうでも良いしあれ会社のことだよ」
「会社のことって?」
「昴と琉依さんの会社移転するかもしれないんだって。もしくは別の場所に支社を作ろうかって話。まだ全然なにも決まってないけど。あ、一応ここだけの話なんだって。ここだけってどこって感じだけど」
「そうなんだ。そっか、そういう話なら私が首を突っ込まない方が良いね。それで、どうしたの?」
「むむ!!椿は隼人のことばっかり!!」
「そんなことないよ。ごめんね」
「そんなだから隼人が帰ってこないってわーってなっちゃうんだよー」
「え、そんなだから?」
「隼人が帰ってこない、へへーんおもちゃ散らかし放題だーとか帰ってきたら足つぼ攻撃だって廊下に足つぼマットで歩けないようにしてやるとかベッド独り占めだーとかそんなんで良いのに。隼人なんてただのへっぽこぴーなあんぽんたんなチョコチョコペーなホニャヒニャッポなんだからもっと気楽で良いじゃん」
「な、なんだかよくわからないけどわかった。ありがとう。好きすぎるから不安になってるってことだよね。隼人さんに一直線で好き好きってなってるのをもっと落ち着いて周りを見れば良いんだね」
「さすが私と椿の仲だねー!!じゃあ私を見てー!!」
「うん」
「じゃん!!ネイリスト独立するまでの道のり!!」
「わあ、これは?」
若菜が見せてくれたのは誰かのブログだった。
「これは私が通ってた専門学校の卒業生のブログだよ。独立して自分のお店を持ってるの!!この人に連絡したら独立しようと思ってからのことをブログに書いてたから読んでみてって、それから話も聞かせてくれたの!!」
「え!?すごいねー!!」
若菜も頑張ってるんだな。私も頑張ろう。なにを頑張れば良いのかわからないけど。
若菜はブログを見せてくれながらこれはこういうことなんだってとかあとからこうすれば良かったって思ったんだってとかいろいろ教えてくれた。




