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50話  「それは山口さん家のつとむくん……」

 章機能が反抗期なんで章が作れないんですけど、この章に題名を付けるとしたらこうですかね“事件解決したのにまだまだ帰れねぇ! 波乱の獣王国編〜加速する勘違い〜”

 提案は随時募集中です。思いついたら教えてくださいね。


 今話は主人公がひたすらいちゃついてるだけです。そろそろ「主人公やばい」みたいなタグつけといたほうがいいかもしれません。



 






「あああぁ〜、ぐえぁ、づがれだぁ……ふえぇ、疲れたよぉ」


 俺達は今、あの村を救ったことが認められて色々あるから城に留まることになった。中々帰ってゆっくりできない。

 泊まるための部屋に案内されているところだ。

 それにしても王様見た目こっわ。ライオンこっわ。風格がすごいわ。


 それになに? あの第一王子。藪から棒にかわいいって……聞こえてんだぞ。死渉イヤーは地獄耳だからな!

 ん? よく考えたらあの空間にかわいいって言えるような存在は巴くらいしかいなくないか? しかし、巴が世界一可愛いのはこの世の共通認識だけど、普段はその可愛さを隠すようにしているせいで、一発で巴が可愛いと見抜ける眼力を持つ人間は少ない。普段からキレイにしてるクラリーヌの事か? クラリーヌも可愛いからなぁ。でも、あの時俺の隣にいたのは巴だけで、やたらとこっちに視線を感じたからやっぱ巴の事か………見る目あるな第一王子! お前とはいい酒が飲めそうだっ! でも、嫁にやるかどうかは別だからな。確かに位は高いかもしれないけど巴には到底釣り合わない。まずはお互いの気持ちをたしかめあって……。


「声の変わり身が早い」


 世界一可愛い巴に突っ込まれる。万が一の事はない(というか第一王子が血迷って巴をどうにかしようとした場合第一王子が確実に死ぬ)だろうけど、これまで以上に巴の事を見ておこう。


 どれ、俺のスーパー変声ボイスを披露してやろう。


「ふふっ……あ゛〜……あたしぃ〜、ヒヨコさんが可哀想だからオムライス食べられなぁ〜い」


 ピヨピヨ〜>_<

 どうだ! 題して〈猫を被る女Inハスキーボイス〉


「嘘つけぇ」


「嘘ですわね」


「嘘っすね」


「みんなひどい」


 落ち込んだ。みんな俺をそんな人間だと思っていたのか。まぁオムライス食べるけど。

 それにオムライスに使われてる卵って無精卵だからヒヨコがどうこうとか無くない?


「ここで引き下がるなんて満じゃないよ……」


「じゃあどうすればいいんだよ……」


 なんか不満そうだし、要求水準が高いよ。天才かよ。天才美少女だったわ。


「この花形、ここでマウンドを去ってしまう宿敵など許さん」


「それは花形さん家の満くんじゃ……」


 俺はあんな髪型してないし野球もしてない。ついでにスボーツカーをブイブイいわせたりしない。品行方正、握髪吐哺な上に春夏秋冬の死渉さん家の満くんじゃい。

 それに、それは花形のセリフだから俺が言うべきじゃないんですかね巴さん。


「どうしたのっかぁなぁ〜」


「それは山口さん家のつとむくん……」


 この頃すこーし変よ。


「返事はいつも」


「あーとーでっ……あっ」


 くそっ、乗せられた。この天才美少女め……。


「ふふん」


「相変わらず世界観が独特っすね」


「「そう?」」


 異世界だとそうだよな……よく一人で異世界転移してる主人公っているけど、誰も自分の一発ギャグを理解してくれないなんて気が狂わないのかな? 俺は巴がいるからいいけどさ。


「こちらでございます」


 そして、部屋についたようだ。真顔で犬耳のお兄さん(人間語喋れる)が2つの部屋を示す。ふむふむ、つまりこれは……。


「じゃ、夕飯のときに集合ね!」


 巴の手を引き右側に……「ちょいちょいちょいちょい! 待ってくださいっす!」


「どうしたアキルク」


「ミツルさんとトモエさんが同じ部屋って、クラリーヌさんと自分が同じ部屋になる事じゃないっすか!」


 アキルクが俺の肩をつかんでブンブンしようとしてくる。だが甘いな。


「くっ、なんで動かないんっすかねぇ⁉」


「体幹」


 芯が違うんだよ芯がっ!!


「うー、悔しいっす……じゃなくて、問題っすよ! 未婚の男女が同じ部屋なんて!」


 お前はお硬い私立の校長かっ!


「だめ?」


 こっちは慢性的な巴不足で気が違いそうなんだよ!! 最近甘えてないし甘えられてない! いつも隣にいるのに、仕事中だから禄に絡めないこの生き地獄! もう助けてくれぇ! 助かる方法は知ってるんだよ!


「だめっすよ!」


「満、可愛く小首を傾げても無理なことってこの世に存在するんだよ」


「そんなバナナ……クラリーヌは嫌?」


「アキルクさんは知らない方じゃ無いし、わたくしが嫌がる事をする方でも無いのは分かっていますわ。ミツルさんがどうしてもと言うなら……」


 うーん。困ったくまった……あ!


「すいません、ふたり部屋1つとひとり部屋2つにしてもらって構いませんか?」


「……少々お待ちください」


「すいません」


「いえ」








 少々待ちました。


「ありがとうございます。わざわざこんないい部屋を……」


「では、ごゆっくり」


 犬耳お兄さんが去ってゆく。


「「はぁ〜」」


 やっと、ひと心地つける。


 迷宮前に獣人達を送って、獣王国に戻って生活を保証してもらうために少数だが、またまた獣王国を目指す。シンクは「故郷に戻ったよ〜」と言って姿を隠させて迷宮の見張り。ついでに式神をいくつかあっちに置いてきた。そして暫くここに住む。

 あ、うまく行けば俺達の名前をここに轟かせることができるな!


 ざっと辺りを見回し、不審なものが無いかチェックする。天井にいる人たちは許容範囲内だから無視。なにかやらかすつもりも無いし、逆に俺達の善良さを見せつける事で警戒心を無くさせる。


 そうしてやっと、数日ぶりに完全に剣帯を外す。巴もガチャガチャとレッグホルスターなどを外し始めた。

 開放感すげー。身体がかるーい。


 靴を脱いでベッドに倒れ込むと、巴が上に乗っかってくる。柔らかいオブ柔らかい。お肌スベスベじゃん何の石鹸使ってんの? あ、俺もおんなじの使ってたわ。


「んー、疲れた」


「お疲れ様。よく頑張ったね。奪い返しでもいっぱい働いてくれてありがとう。愛してるよ」


「うん」


 ぐっと巴が胸元に抱きつく。お前も寂しかったんだな。


「私も、愛してる」


「へへへ……」


 巴からの愛してるいただきましたぁ! へへ、レアだぜ。嬉しい! 大好き! 好き好き愛してる!

 あー、なんでこんないいにおいするんだろ巴って。

 可愛くていいにおいって最高だな! 見る目あるな第一王子。だが嫁にはやらん。俺に2000回勝たないとまず土俵にも立てんわ。


 かわいい、大好き。世界がその存在を全肯定すべきじゃないかな。なんで俺みたいな木っ端の相棒やってくれるんだろ。優しい〜〜好き〜。

 学校の先生から染めてるんじゃないかと度々疑われた茶髪に指を絡める。さらさら、きれい。


「なに?」


「きれいだなって」


「ふうん」


 巴か目をこすり、そしてまた俺に抱きつく。


「ん」


 そして巴からキスしてくれた。巴は柔らかくて甘い。巴に応えるように更に押し付ける。何度も唇を重ね、甘やかな触れ合いを楽しむ。

 いつまでやってても飽きないけど、流石に眠い。いつの間にか、眠りについていた。










 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










 どうやら夕飯時まで眠っていたらしい。呼ばれて出てみるとみんな眠そうな顔をしていたから、恐らくみんな寝ていたのだろう。

 部屋は話された獣人──トールフ、ミーユ、ブッカ、ラグの4人も眠そうだ。


「久々によく寝たぜ」


 ふあーあ、と随分気の抜けたあくびをするトールフ。


「ごはん、立派でおいしそう、です」


 そして、このブッカという鼠の獣人はやたらと俺に懐いている。今もわんこのようにトコトコ俺の方に来た。鼠なのに犬耳と尻尾の幻覚が見える。


「そうだな。見たことない料理ばっかりだ」


 獣王国独特の料理なのだろうか。美味しそうだが、名前は分からない。肉が多いな。


「はい」


「マナーとか全然知らないんだけど大丈夫かな」


「こちらは、どのような方でも楽しめるようになっております。マナーなど気にせずどうぞ」


 犬耳お兄さんが教えてくれた。


「ま、身内だけだし気軽にいただこうぜ」


「そうですわね」


 クラリーヌはマナーとか余裕そうだな。このメンバーに汚く食べつ奴は居なかったし大丈夫だろう。


「「「「いただきまーす」」」」




 獣王国の料理めっちゃうまい。










 作者にはセンスというものが存在しないので登場人物達がどんな服を着てるのかイマイチ表現できないんですけど、考えなきゃなって思うんで考えときます。思いついたら本篇ぶった切って服編やるかもしれません。

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