表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/68

33話  「つまり、ビックビーフが欲しいんだな! やるもんか!」

3章始まりです!

 






「クセになってんだ、音殺して動くの」


 巴が音を殺しながら近づいてくる……名ゼリフバトルがお望みか。

 読みかけの本を閉じる。


「俺のものは俺のもの、お前のものは俺のもの」


「……あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ」


「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」


「安西先生……!!」


「バスケが、したいです……………」


 膝をつく俺、立つ巴。名シーンの再現だ。


「何してるんすか」


 限界までしごかれて疲れ果てたアキルクが、呆れたように突っ込む。


「「暇!!」」


「今日は土砂降りですものね……」


 クラリーヌが何やら実験道具を弄りながら言う。


 俺達は冒険者だが、毎日ギルドに行かなくてはならないほど困窮してはいない。一年くらい何もしなくても、生きていける財力はある。

 本日はまるで、バケツの水をひっくり返したかのような土砂降りだ。だから、ギルドに行きたくない。故に行かない。

 雨水の大きさおかしいもん。俺、か弱いから風邪引いちゃう。

 こう雨がふっていては、いい依頼も無いだろう。魔物も休んでいるはずだ。しかし、何もないと暇だ。

 訓練をしたり、本を読んだりしていたのだがそれも限界がある。


 《トランプします?》


「「「「しようか」」」」


 トランプ大会の始まりだ。










「はい、上がり」


「くっそ、ババ抜き5連勝とか強すぎだろお前……」


 強い、巴さん流石強い。何だろうね。運がいいっていうかさ、勘がいいよね。戦闘における勘の良さの無駄遣いだよね、うん。1回休もうよ、勘。


 結果は予想通り巴無双だ。こいつが苦手なゲームは、リ○ム天国くらいだろう。なんでも、他人のリズムを押し付けられてる感じが苦手らしい。

 ちなみに、死渉家でゲームをすると全員が動体視力が良すぎて、全てがゆっくりに見えるから勝負にならない。寧ろ、こっちのスピードに機械が追いつけない事がある。



 閑話休題



「ババ抜きもジジ抜きも7ならべも大富豪も神経衰弱も全部やった」


 それから暫く経って、トランプも飽きてきた。


「うーん」


「やる事無いっすね」


「もう一回シャトルランでもするか」


 走るか。


 《いやです》


「難しいですわね」


 そっかー。えー、じゃあ……。


「はい、アキルク! コイバナして」


 俺と巴は無いし、シンクも無い。クラリーヌも無さそう。よってアキルク。


「えっ」


 《しりたいです》


「聞きたい」


「それは気になりますわね」


「えぇ〜」


「無いの? 有るの?」


「な、無くはないっすけど……」


 そんなぁ〜とばかりに困り顔のアキルク。皆の期待の視線に負け、ポツリポツリと語りだした。


「ちっちゃい頃の話なんすけどね──」



 で、コイバナして遊んで、珍しく非生産的に一日を終えたのが昨日。












 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「一目惚れした。オレの女になれ!」


 そして、得体のしれないケモミミ男に巴がプロポーズされたのが、今日。

 ビシッと巴を指差し、少女漫画にありそうな俺様な発言をする。狼みたいな耳が生えた頑固そうなイケメンだ。


「……だってさ、満」


「ナチュラルに俺に擦り付けんなや……だってさ、アキルク」


 諦めろよ、女って言ったじゃん。取り敢えずアキルクにキラーパス。


「いや、自分の顔見て男って思えるの? 勘違いした可能性あるよ」


 どう見ても女じゃんとでも言いたげだな! チクショウ!


「自分に擦り付けんのもやめてくんないすかねぇ⁉………そ、そうらしいっすよ……クラリーヌさん」


 言いにくいんなら、無理して言わなくていいんだよ? キャラ的にクラリーヌには言いにくいけどさ。


「ですってよ、トモエさん」


「一周した………」


 夏の訪れを予感させる少し暑い風が吹くなか、晴れときどき魔物の死体。ドキドキワクワクのプロポーズ・バケツリレーが始まる。


「無視するな! だから、オレの女になれ! 番になれ!!」


 ケモミミが、更に言う。


「無理」


 巴、当然の返答。


「なんでだっ! 結婚しろ!」


「そういう事は俺に勝ってから言えやワンころ」


「なんだと!」


 自己紹介からだろうがそういうのは! ナメとんのかワレ、あぁん⁉


「ミツルさん、口調口調!」


「取り敢えず爽やかな笑顔で言うのはやめてくださいませんこと?」


「まずテメェは誰なんだよ」


 名前を教えろ。そうしないと身元を調べられない。


「オレはトールフ・トーレース! 称号は“炎の戦士”! 冒険者だ!」


 トールフ・トーレースね、覚えた。


「ランクは?」


「一年でC級だっ!」


 あくまで叩きつけるように、吠えるように言う。

 一年でC級って凄いのん?


「凄いのん?」


「凄いっすよ。確か、C級になるには5年くらいが平均っすね」


「ふむふむ、それじゃあウチの子をおたくにやる訳にはいきまへんわトールフはん」


「何故だっ、そもそもお前は誰だ⁉」


「君の名は……じゃなくって、俺の名前はミツル・シワタリ。称号は“紙使い”で1ヶ月でB級冒険者になりました」


「なっ」


 トールフが驚きで顔を引きつらせる。


「嘘だ!」


「はい、どーぞ」


 冒険者カードを見せる。冒険者カードの偽造は難しいから、信じるしかない。というか、事実だし。


「そんな馬鹿な……」


 最初の勢いは無くなり、耳をペタンとさせながら呟く。


「でね、お前が結婚したがっているこの子も1ヶ月でB級。お前みたいな弱いやつに渡すわけにはいかない」


 巴が結婚したかったら、モヤシでもチキンでも教育し直すからいいんだけど、今回は巴が嫌がっている。これを理由にお引き払い願おう。


「くっ……()()()()()()()()!!」


 トールフが叫ぶ。切羽詰まった様子だ。


「結婚してくれっ」


「やだ」


 即答の巴。


「それは困る……?」


「どうかしたんすか?」


「それは困るっておかしくないか?」


 結婚したいんならもっとこう、あるだろう。


「結婚したいなら、『それは嫌だ』じゃございませんこと?」


「あっ」


「それ」


 それは困るって、巴を手に入れなきゃならないような事情があるって事か?


 さて、このケモミミがやって来るまでの経緯を思い出してみよう。










 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











『今日の夕食はステーキ一択』という信念の元、俺達は牛系の魔物を狩りに出た。

 肉は、家畜より魔物の方が美味しいのはこの世界では当たり前らしい。


 途中でゴブリンの集団を蹴散らしながら、ビックビーフというとても美味しい魔物を発見する事ができた。

 ビックビーフは、遭遇率は高いのだが気性が激しいらしい。だが、問題なく仕留められた。


 その直後くらいに、あのケモミミもといトールフが来たんだ。










「つまり、ビックビーフが欲しいんだな! やるもんか!」


「何言ってんすか」


「違いますわよ……巴さんの強さが欲しいんじゃありませんこと? アキルクさんはとミツルさんは男ですし、わたくしは殆ど戦闘に参加してませんでしたわ。そうすると、トモエさんしか“強い女”がいませんわ」


 そうすると……。


「消去法で選びやがったな。帰れ帰れ!」


 しっつれいな! そんな生半可な男に巴をやるわけにはいかん!

 今の俺は、完全に嫁入り前の娘を持つお父さんの気持ちだ。俺に30連勝しろ! そうしたら考えるだけ考えてやろう! 2秒だけな!


「お前にお義父さんと呼ばれる筋合いは無い! お引き取り願おう」


 首トンすれば意識は刈れる。はちみつ塗りたくってここらへんに放置しよう。


「満がなんかあくどい事考えてる」


「はっはっは、ちょっとしたイタズラだよ」


 とにかく、このトールフとやらは巴に相応しくない。消去法で選ぶなんて、なんたる無礼。ケッ。


「帰って寝ろ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


「ちくわ大明神」


「帰れ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


「帰れ」


「困る」


 だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


「殴ったほうが早いんじゃねぇか? オラァ!!」


「それな」


 巴! 分かってくれるか!


「お、落ち着いてくださいっすミツルさんっ!」


「お話しだけでも聞きませんこと?」


「えー」


「ね」


 クラリーヌの上目遣い……うーむ。


「私も聞いたほうがいいと思う」


「よし聞こう」


 ま、巴の事だしな。巴の意見を尊重しよう。ふん、まだお義父さんと呼ばれる覚えはないからな!


「即決っす⁉」


「話を聞こうではないかトールフ君」


「…………」


「お話ししてくださらないと、わたくし達もどうすればいいのか分かりませんわ」


「実は………」


 そして、トールフは語りだした。自分の種族の掟と、故郷の村の現状を。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ