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7 システム開発課 (SIDE:澪)

 このところあまり身体を動かしていなかったためか、四階まで上がると軽く倦怠感を覚えた。もしかしたら、歩幅と歩く速度が異なる人と一緒に上ったせいかもしれないけど。


 仕方がない。私の身長は百五十四cmで、鴻先輩とはフトアゴヒゲトカゲの体長くらいの身長差があるのだ。男女差や個人差は多少あれど、私より足が長くて速いのは当然だろう。

 明日から体力作りのためにウォーキングを始めようかな。どうせ朝食買いに出るし。


 システム開発課は、東階段を上って折れた通路の先の右手側にあった。階段からは男性用トイレ、書庫と続いた隣の部屋である。

 向かい側にミーティングルームと備品庫と書かれた部屋がある。書庫とシステム開発課と書かれた部屋の間が離れているのは、おそらくVTRでみたあのガラス窓とガラス扉で囲まれた部屋があるからだろう。


 システム開発課の出入り口付近には、モーションセンサー付きの監視カメラがあり、暗証番号錠の付いた金属製のドアの手前に足拭きマットが設置されていた。


「この部屋までは土足で入れるけど、靴が汚れている場合はここで拭ってから入室してくれ。たまに通路や階段で水か何かをこぼすやつがいるから」


「わかりました」


 鴻先輩が慣れた手付きで素早く暗証番号らしきものを入力しながら言うのに、頷いた。


「あ、入室する際に入力する番号は個人によって異なるから。今日はまだ音無さんの分はまだ設定されてないから、出入りの際は言ってくれ。午前中の内に設定するから昼からは使えるようになるけど。

 あと、電子錠は解錠後に扉を閉めると自動でロックが掛かるから気を付けて。それと慣れないとちょっと重く感じるかもしれない」


「はい、わかりました」


 なんだろう、この会社、中途半端にハイテク?なところと、アナログなところが混雑している気がする。


 ここまでするなら、いっそ全社員にIDカードを発行してエントランスから何からきっちり管理した方が楽なんじゃないだろうか。それとも費用か何かの関係で難しいのだろうか。

 だけど自社でシステムやアプリケーションを製作して導入しているのなら、いっそスマホ用の認証アプリとかを作って認証できるようになれば、かなり便利なんじゃないかな。


 鴻先輩の後について入室すると、そこにいた男性社員が悲鳴のような声を上げた。


「おっ、おおおお女の子っ!? えっえっ、なっ、なんで!? おおお鴻ぃっ!!」


 ワタワタと慌てふためき、やたらキョロキョロし動揺して顔を真っ赤にして震えている小柄な青年は、周囲をしきりに警戒しているハムスターを彷彿とさせる。


「おはよう、石田。昨日話した新入社員だ」


 鴻先輩の言葉を受け、一歩前に出て頭を下げる。


「今日からお世話になる音無澪です。初めまして、よろしくお願いします」


「おおお女の子が来るとか聞いてねーよ鴻ぃぃっ!」


 しかしハムスター青年は、そんなことなど知ったことかと言わんばかりに、裏返った声で叫びながら鴻先輩に飛び掛かった。


「あれ、そうだったか? そんなことより挨拶と自己紹介しろよ、石田」


「無理っ! こっ、心の準備がっ……心の準備が必要だから、今は絶対無理ぃいぃいいっ!!」


 そう泣き叫ぶような声を上げつつ小動物のような素早い動きで室外へと飛び出して行った。


 はて、心の準備っていったい何をするのだろうか。精神統一? それとも気持ちの切り替え? 生まれて初めて見る反応だ。

 気になるけど、聞いても何をしていたのか教えて貰えそうにはないな。


 そんなことを考えていた私に、鴻先輩が頭を下げた。


「ごめん、あいつ、悪気はないんだ。ただちょっと臆病で人見知り激しくて小心者なだけで。その、戻って来たら挨拶させるから」


 別に鴻先輩が謝る必要ないのに。変なところで責任感強い人だな。


「いえ、気にしていません。大丈夫です。それより、彼は大丈夫なのでしょうか」


「あー、うん、それはたぶん問題ない。どうせそこのトイレに逃げ込んでいるから、しばらくしたら戻って来るはずだ。すぐに戻って来ないようなら、きっとドリンクコーナーに行ってるんだろう」


 行動予測ができるということは、時折あることなのだろうか。なんだか生きていくのが大変そうな人だ。ハムスターやモルモットほどは速くないだろうが、普段から脈拍が速そう。


「先程の方の名は、石田さんとおっしゃるんですか?」


 私が尋ねると、鴻先輩は頷いて肯定した。


「その通りだ。石田(いしだ)裕紀(ゆうき)、俺と同期だが、俺は高専卒であいつは四大卒で二歳上だ。

 工業デザインを専門に学んだらしいが、手先が器用で発想が柔軟で何でもできるオールマイティなんだがあの性格と落ち着きのなさが欠点で、責任のある仕事やまとめ役みたいなものはやりたがらない」


 誰がどう見てもあの人にそんな仕事やらせるのは酷である。ストレスかプレッシャーですり切れそう。


 能力的または技能的にできるからといって、性格・人格的にそれが可能かどうかは別の話だ。自分に自信のない者、自身を卑下してしまう者の心のありようを一朝一夕に変えるのは難しい。

 それは人を根本から変えてしまうようなものだ。そんなことが可能ならば、誰も悩んだり苦しんだりしないのだ。


「ふわぁああぁ、うっかり昨夜は帰り損ねて机の上で寝ちまったわ。洗顔も髭剃りも着替えも持ってない時に泊まり込みやらかすとか、ついてねぇや。あっ、鴻、お前髭剃り持ってねぇ……か」


 ガチャリと出入り口の扉が開いて、寝癖のついた短髪と無精髭に上下ジャージの男性が入室してきた。


「……あ、れ?」


 どうやら鴻先輩の影になっていて、入ってすぐは私が見えなかったようだ。


浦谷(うらや)先輩、おはようございます。こちら、今日からうちで働く音無澪さん。あとジャージからTシャツか何かはみ出してますよ」


「おっ……えっ、あぁっ……!」


 そう叫ぶとジャージ先輩はクルリと身を翻し、駆け出すように退室してしまった。しばし、室内が静まり返った。

 鴻先輩が困ったような顔でガシガシと頭を掻いた。


「あー……その、今のが浦谷(うらや)久志(ひさし)先輩、うちの主任。仕事はできる人だが、ちょっとズボラでおっちょこちょいなのが玉に瑕で。悪い人ではないんだけどな」


 困ったな。システム開発課ってこんな感じの人ばかりなのかな。いくらビジネスマナー本を丸暗記しても、この調子じゃやっていけるかどうか正直自信がない。


 いかなる事態にも対応できる図解式もしくは動画付きの応答マニュアルが、切実に欲しい。正しいやり方がわかるのならば、自分で作っても良いのだが。

 最近は自身にさしたる技術がなくても簡単に無料配布されている3Dモデルを使って動画を作る無料ツールとかがあるから、時間と手間と労力さえ掛ければ、頭の中にあるイメージを形にすることができる。


 できれば、自分以外の見知らぬ誰かがやってくれれば、なお良いのだが。


「ちぃっすー! なんか浦谷主任がダッシュでトイレに駆け込むの見かけたんっすけど、何かあったんっすか?」


 また誰か来たようだ。デニムの上下にTシャツ姿のスポーツ刈りみたいな髪型の男性だ。


「おはよう、下村(しもむら)。ああ、新入社員の音無さんを見てちょっとな」


「おはようございます、初めまして、音無澪です」


 そう言って頭を下げた。今度は無事挨拶できた。


「こんちはっす、下村(しもむら)大輔(だいすけ)二十四歳、ただいま彼女募集中っす!」


 ち、近い。明るく元気な挨拶はともかく、できれば親しくない人には半径三m以内には近付いて欲しくないのに、三十cm内とかやめて欲しい。思わず後退りして距離を取ってしまった。


「おい下村、初対面の女の子にあまり近寄るな。パーソナリティスペースって言葉を知らないのか? それほど親しくない間柄の人と会話する時は、適切な距離を取れ。でないと嫌われるぞ」


 鴻先輩の叱責に下村とかいうスポーツ刈りの人は、慌てて頭を下げて距離を取った。


「申し訳ないっす、悪気はなかったっす! 今後は気を付けるっす」


 目算一mほどの距離まで下がってくれた。このくらいの距離なら仕方ないし、許容範囲だ。先程まで人の顔を見るなり即座に逃げてしまう人ばかり続いたからびっくりしたけど、初対面で馴れ馴れしくされるのも扱いに困る。

 こちらも初めてだから悪印象を与えないようになどと思うから、余計にだ。どうしても嫌なことは最初に言っておいた方が、後のトラブルを避ける対策にもなるが、どこまで許容されるのかわからない。


「いえ、こちらこそ申し訳ありません」


 ここはたぶんこちらも頭を下げた方が良いだろう。自分が気付かずに相手を不快にさせる何かをやらかしていない自信がない時は、考えるより先に頭を下げておいた方が無難な場合が多い。

 状況を正確に客観的に判断できる自信は皆無なのだから、低姿勢な人だと思われても良い。しつこくない程度に、適度に適切にやらねばかえって無礼になるから程々に。


 フレックスタイム制というのはニュースなどで聞いた覚えはあるが、実際の体験はないので良くわからないのだが、出勤時間が自由といっても意外と同じ時間帯に出る人が多いのだろうか。


「おはよーございまーす」


 また一人出勤してきた。眼鏡を掛けたひょろっとした人だ。体格が華奢なだけで背は高くもなければ、低くもない。


「おはようございます」


「おはよう、崎村」

「ちっすー」


 挨拶を交わし目が合ったので一呼吸置いて、頭を下げた。


「新入社員の音無澪です。システム開発課に配属されました、よろしくお願いします」


「あ、はい、ぼくは崎村(さきむら)亮太(りょうた)です。こちらこそよろしく」


 その後、先程逃げた浦谷先輩が戻ってきたので挨拶を交わした後、鴻先輩に案内されて席に着いた。一番出入口に近い席で、鴻先輩の隣である。

 残り三つと課長の席が空いている。


「他に加野上(かのうえ)一琉(いちる)太田(おおた)翔平(しょうへい)小田(おだ)直樹(なおき)という社員がいるが、彼らは十時半から十一時前後に出勤してくる予定だ。

 遅くとも前日までには、翌日の出勤予定時刻をパソコンなどで事前に申請しておくんだ。実際は、遅番・早番あるいは代休として交代で出勤している。


 ちなみに代休は、日曜・祝日など本来会社が休みの日に出勤した場合、代わりに休む日を申請して休みを取る。これは有給扱いにならないから、たまに有給を代休の前後に取って平日に連休を取るやつもいる。

 新入社員は入社後半年経たないと取れないが、取りたい時は事前に俺か課長に相談してくれ。その時の状況によって業務上支障をきたす場合は、許可が取れないこともある。


 会社の通常の営業日と休業日については、こちらに卓上カレンダーを用意しておいた。赤丸が休みだ。新入社員の研修期間は三ヶ月だが、半年まではカレンダー通りの休暇を取ってくれ。

 それ以降の勤務については、近くなったら相談して決めよう。慣れてきたら自分の判断で決めても良いが、少なくとも半年以上経つまでは休日と遅番の出勤はさせないから。


 それとこれが君がこれから実際に行うことになる業務マニュアルと必要になりそうな資料と、気の付いたことなどをメモするためのノートだ。わからないことがあれば聞いてくれ。

 九時になるまでは好きにしていて良い。必要ならこの階にある飲料コーナーに案内しようか? コーヒーや冷水やホットのお茶などが飲めるサーバーと紙コップもある」


「ぜひお願いします」


 飲料コーナーはエレベーターホールの近くにあった。どうやらここの建物は基本的に十字型の通路で区切られていて、通路沿いにそれぞれ部屋や施設などがあるようだ。

 エレベーターや階段、トイレの場所はどの階も同じ位置にある。システム開発課から女子トイレへ行くには、総務部や広報課などの前を通らなくてはならないらしい。


 同期で総務部に配属されたのは一名だったと記憶している。全員分の名前は記憶しているが、女子など一部の顔は昨夜、集合写真を確認して特徴などを記憶しておいた。

 でないと通路やトイレなどで遭遇したのに初対面的な対応を取ることになる。


 同期の男性は顔と名前が一致しないが全員会釈で済ませるので、たぶんきっと何とかなると思いたい。

 自信がないのは、これまで痴漢や変質者遭遇することはあっても、ナンパは一度もされなかった私が、チャラ男先輩につきまとわれる一件があったからである。


 これまでは誰とも視線が合わず、私が声を掛けられて反応するのは相手を殴るか喧嘩を買う時だけだったからかもしれない。

 ナンパに気付かずスルーもしくはガン無視で素通りするか、触れられて反撃あるいは脊髄反射で口撃していた可能性大である。記憶にないのでどうとも判断つかないが。


 部屋に戻ると入れ替わりに石田さんが戻ってきており、ようやく自己紹介を終えることができた。その頃に課長も来ていて、全員の前で改めて挨拶と自己紹介を行った。


「音無澪です。大学では生物学を学び、その関係でパソコンの扱いを覚えました。わからないことばかりで、皆様にはご迷惑をお掛けすることもあるかと思いますが、なにとぞよろしくお願いいたします」


 そう言って深々と頭を下げる。さあ、始業だ。これから何をすれば良いのかわからないけど、一生懸命頑張ろう。



   ◇◇◇◇◇



 出勤初日。どうやら私がこれから行う業務は、主に社内ネットワークを管理・監視するシステムのログやエラーメッセージを定期的に確認しておかしなところがないかチェックする日課の他、社内から掛かって来る内線電話を受けて内容をメモや取り次ぎをしたり、他の部署から回ってきた書類や資料を担当者に渡したり他の部署へ書類を配達したり書類整理や片付けをしたりといった雑用だったりするようだ。

 その他にも仕事はあるようだが、今のところはそれらの他、手渡されたマニュアルや資料を読んで勉強してからになるようだ。


 たいしたことはしていないのだが慣れないことの連続で、目や肩などに疲労を感じる。今日のところは特に問題は起こらなかったし、鴻先輩は親切で概ね的確だったので困ったりすることもなかった。

 実に順調である。まぁ、初日から何かトラブルや問題が起きてしまう方がまずいのだが。


 最初身構えたほど濃いキャラの人もいなかったので、とても安堵した。最初にたまたま強烈な人が出て来ただけのようだ。そうであってくれねば、こちらも困る。

 予想していたよりも馴れ合ってなくてそこそこ適度な距離感だったことも、安心した理由の一つだ。当たり前なのかもしれないが、業務時間中に無駄な雑談をしたり、遊んだりする人もいなかった。


 システム開発課の続き間のガラスで囲まれた無人の部屋はサーバールームというらしい。見渡す限り黒い(ラック)が立ち並び、そこにサーバーと呼ばれる機械がぎっしり詰め込まれ、外履き侵入禁止の床には塵一つなく、大きな空調機や冷却ファンや換気用のファンなどが絶えず回っている。

 その部屋は会社の核となる大事な部屋で、物理的な侵入は元よりサイバー的な侵入を決して許さない事が、システム開発課の重大な職務の一つなのだそうだ。


 社内ネットワークとか有線LANがどうとかいった話はともかく、ファイルサーバーとか(ネットワーク)(アタッチド)(ストレージ)だとか言われても良くわからない。

 焦らずに少しずつ覚えていけば良いからと言われたが、話に出たからにはいずれ必要になる知識だから覚えておけということだろう。


 鴻先輩に「プロトコルって何ですか」と質問したら「深く考えずに、そういうものがあるってことだけ覚えれば良いよ」と言われた。

 さっぱり意味がわからない。良くわからないけど、そういうルールがあるという程度に思っておけば良いらしい。

 数学の公式みたいなものなのだろうか。そうする意味を考えると難しくなるから、そのまままるっと記憶しておいた方がわかりやすい、的な。


 いくつか資料にと渡された書籍に関しては、後日ちゃんと返すのであれば持ち帰っても良いと許可を貰ったので、有り難く持ち帰り家で読むことにした。

 しばらくトートバッグで通勤することにしよう。


 帰宅途中に朝食用のイングリッシュマフィンを買って、バス停でバスを待っていると、同じバス停にチャラ男先輩が他の社員と共に現れた。

 一瞬目が合ったものの向こうから話し掛けてくることはなく、心から安堵した。いったい今朝までは何だったのかさっぱりだが、諦めてくれたらしい。本当に良かった。


 彼の存在をすっかり忘れた頃に、乗る予定のバスが来た。タラップを上がる際に、視界の端にチャラ男先輩の姿がチラリと見えた。

 バスの中は混雑していて、座れる席はなかった。降車に便利そうなところを探してみたが、移動できそうにない。諦めて適当なところの手すりにつかまった。


 自宅の最寄りのバス停まで、ラッシュ時以外であれば二十数分ほど掛かる。通勤・帰宅時の道が混雑する時間帯は、その時々で経過時間が異なるらしい。

 バス停にバスが来るまで十分近く遅延し、それが更に延びている。夕飯は家の近くのコンビニで買うつもりだが、遅くとも二十時前には食べられると良いな。


 間食はしていないのでお腹が空いてきた。現在時刻は十八時四十三分。事故に遭ったりしなければ、問題なく十九時台には帰宅できるだろう。


 そんなことを考えていると背後、腿の辺りに何か違和感を覚えた。最初は、誰かの荷物が引っ掛かったりしているのかとも思ったのだけれど、それにしては動きがおかしい。

 しばらく考えて、どうやらこれは痴漢だと気付いた。なるほど、そういえば混雑時のバスにはそういうこともあるのだったと思い出す。


 じゃあ、まずはこの太腿辺りを撫で回している手を掴んで捻るとするか。そう考えた時、


「おい、そこのお前、何やってるんだ」


 一足先にその手が掴まれ、力尽くでねじ上げられた。


 ……その男性の声に、何故か聞き覚えがある。嫌な予感がして恐る恐るそちらを振り返ると、そこには予想通り、チャラ男先輩がいた。


 ああ、できうることなら係わりたくない。私にとっては痴漢を問答無用で殴ることより、この人を相手にしなくてはならないことの方がずっと面倒で厄介だ。


「運転手さん、この人、痴漢です」


 チャラ男先輩は掴んだ男の手を高く上げ、良く通る声を張り上げる。


 さて、知らない赤の他人のフリをしても良いだろうか。……駄目そうだ、彼の視線はしっかりこちらを向いている。


「音無さん、大丈夫?」


 大丈夫じゃないです。主にあなたのせいで。

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