こんどこそ
人の死ぬ未来が見えようが何だろうが俺は中学生、学校には行かなければいけない。
忌引きで学校は3日ほど休んだ。久しぶりに登校した俺に何と言葉をかけていいのかわからないのか、いつもよくしゃべる友達も軽く挨拶をするだけで話そうとして来ない。
こちらとしても事情も大して知らない輩に大袈裟に可哀想がられるとバツが悪い。だいたい持って可哀想なのは妹だ、俺じゃない。そっとして置いてくれるのは都合が良かった。
いつもと同じように振舞ってやれば周りも関わりやすくなったかもしれないが、そうもいかない。落ち着いているようで、ひどく殺気立っているのが自分でわかる。
色々な事が頭を駆け巡り、時間は思ったより早く過ぎた。
放課のチャイムがなり、各々が帰り支度を整える中、
「炯、一緒に帰ろうぜ。」
そう声を掛けてきたのは、幼馴染の元山だ。
表情に少し遠慮が見られる。やはり話しかけずらかったか、恐る恐ると言った様子だ。
「ああ…」
帰路に着くものの、やはりお互い口数は少ない。
「…サッちゃん、いい子だったよな。」
残念だったなとか、可哀想だとか言わないところが、ヤマは分かっている。
ヤマ兄ちゃん、サチが元山をそう呼ぶもんだから、俺も元山の事はヤマと呼ぶ事にしていた。
ヤマはその大らかさからか、サチにもよく好かれていた。
「…ああ。」
「…あれ、委員長じゃないか?」
10メートル程先にいたのは、俺のクラスの学級委員長だった。名前は確か、-山野一葉-やまのかずは-だったか
委員長としての立場からか、サチの葬式にも来てくれていた。サチの同級生であろう女子が皆べそべそと泣いている中、一人落ち着いた様子で、悔やみを述べてくれた。
その委員長が立ち止まってスマホを見ていた。歩きスマホをしないあたり、流石は委員長と言ったところか。
関心しているとー右眼の視界が広がった。
体感するのはこれで三度目だ。
映っているのは…委員長?
何故かバランスを崩した様子の委員長。そのまま車道へー
そこまで視えたところで駆け出した。
「おいっ、炯!?」
ヤマの呼びかけも無視し、全力で加速する。
ー絶対助ける!
直後俺を猛スピードの自転車に乗った男が追い越した。
合点がいった。バランスを崩す原因はこいつだ!
予想通り男がすれ違いざまに委員長のバックをひったくった。
バランスを崩しよろけて車道に投げ出される委員長。そこにトラックが差し掛かるー
ー間に合え!!