Can I change it?
「どうやら君のそれは…そんな安物ではないようだね。」
「…え?」
「話は真琴さん…君のお姉さんから聞かせてもらったよ。」
「まこねぇ…姉さんから!?」
まこねぇ、昔は姉の事をそうよんでいた。中学に上がり、周りにからかわれるのを恐れて今は姉さんと呼んでいる。
少々こそばゆかったのが顔に出たのか、黒守さんはハハッと笑った。
「二人でいる時ぐらいならまこねぇって呼んであげてもいいんじゃないかい?姉さん、なんて堅苦しいよ。」
「そっ、そうですね…。」
「じゃ、本題に入ろうか。」
黒守さんの表情が真剣になる。
「君の右眼、人が死ぬ未来が視えるんだって?」
「まだ、経験したのは一回だけですが…」
右眼で視えた妹の事故の光景が脳裏に浮かぶ
「問題は…その予知が絶対であるかどうかだね。」
「俺、嘘はついてないですよ。」
「違う、そうじゃないないんだ。」
黒守さんは角砂糖を一つつまみあげカップの中に落とした。
「重要なのは、視えた未来を変えられるかどうか…だろ?」
ポトン、という音が反響する。
単純な盲点だった。死を予知できれば避けらるとばかり思っていたが、どんなに正確に未来を予知できても、変えられなければ意味はない。
「そこでだ。」
黒守さんが真っ直ぐ僕を見据えて聞く。
「君が望んでいるのはズバリ、復讐だね?」
「…!」
さすがは占い師、感が鋭い。
しばしの間沈黙が続く。
それが答えだと言わんばかりに黒守さんが口を開く。
「…やっぱりね。前に見た時は、君の眼にそんな変な光は宿っていなかった。」
「光?」
「人は復讐を誓った時、眼に光を宿すのさ。復讐の炎をね。」
「…。」
「心配しなくても、そんな事に何の意味も無い、なんて野暮なこと言わないよ。しかし…相手は少々手強いようだがね。」
咄嗟に体が反応する。
「サチを撥ねた奴らの事を何か知ってるんですか!?」
「…その質問に答えるには、まず君に聞かなければならないことがある。」
もう一つ、角砂糖を落とす。
「君にとって、今為すべきもっとも重要なことはなんだい?」
どうせ嘘をついても見破られるだろう。ならば本心を言うまでだ。
「サチを殺した奴らを、殺すことです。」
「それが成し遂げられないのならば死んだ方いい、そうかい?」
再び事故の光景が駆け巡る。車に乗っていた二人の男の姿に、憎悪がゆり戻る。
「…はい。」
そう答えた瞬間、右眼の視界が広がった。
圧縮された時間の中で視えたのは、銃を構える黒守さん。そして引き金が引かれ、発射された弾丸が迫ってくる。
これは…あの時と同じ…!
右眼の視界が途切れると同時、思いっきり右に体をよじる。
直後銃声が鳴り、俺の真後ろにあった花瓶が砕け散った。