眼の手がかり
妹の通夜も終わり、人が死んだ時の行事はひとまず落ち着いた。
「炯人。ちょっと起きて。」
「どうしたの姉さん、こんな時間に。」
時計を確認すると、夜中の3時だ。
滞らず返事ができたのは、俺が寝ていなかったからだ。
考える事がありすぎて、眠れるはずなど無かった。
「ちょっと…聞きたい事があって。」
「…そう、ちょっとまってね。」
俺は手元のリモコンで電気を付け、取り敢えず布団を出た。
姉は少しうつむき気味でへやのまえにたって
いたが、よく見ると目のふちが光っている。また泣いたのだろうか。
「どっか座ったら?」
姉に促すと同時、俺は椅子に腰掛けた。
姉はうなずくと、床に敷いてある座布団に座った。
「で、聞きたいことって何?」
どうしてもやはり声のトーンは低くなってしまう。
「サチがさ、救急車の中で言ったじゃない?
…炯人が、また悲しい目してるって。」
「ああ…うん、言ってたね。」
「あれって、どういう意味なのか、気になっちゃって。」
姉さんなら、俺の言う事を信じてくれるかもしれない。
「信じ…られないかもしんないけどさ。」
「うん…。」
「俺の右眼って、人が死ぬところが視えるみたいなんだよ。」
「…どういうこと?」
「あの時、急に視えたんだ。右眼で、サチが撥ねられるところが」
「…またって、どういう意味だったの?」
「前、近所のおばさんが鉄骨の下敷きになって亡くなっただろ?」
「うん…。」
「あのおばさんがスーパーにいた時、なんでか目が離せなくなったんだ。その時サチが俺に言ったんだよ。…なんで、そんな悲しそうな目してるのって。」
「そういう事…だったんだ。」
「で、そのスーパーの帰り道で、そのおばさんは亡くなったんだ。多分、兆候だったんだろうね。」
「兆候?」
「人の死ぬ未来が、視えるようになる兆候だったんだよ、多分ね。」
「今、右眼は見えてるの?」
「いや、普段は見えないみたいなんだ。今も視界半分真っ暗。」
笑って見せると、姉は愛想笑いで返した。
「そういえば…」
「どうしたの?姉さん。」
「うちの親戚に、すごい有名な占い師の人いなかったかしら?」