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死神の右眼  作者: U
第1章
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右眼の秘密

デスノートにタイトルに似た名前の眼が登場しますが、この小説で主要になるのは全く別の代物です。

俺は生まれつき、右眼が見えなかった。

物心ついた頃から不思議でならなかった。

鏡を見る。写るのは左右対称の目。

どちらも瞼を開いているはずなのに、左眼を覆った途端、世界は闇に包まれてしまう。左目と何も違わないはずなのに、左眼と何かが違う右眼を、幼い頃からよく眺めていた。

さほど不自由を感じた事は無かったが、遊びで野球をする時など特に、距離感が掴めずうまくいかなかった。

今俺は中2。高校3年の姉と、小学4年の妹がいるが、どちらにもそんな障がいはない。

医者によると、眼になんら異常はなく、見えているはずなのに、見えていない。全くもって原因不明という事だった。脳が右眼からの情報を拒絶しているとしか考えられないが、そうなるには何らかのトラウマか何かの精神的ダメージが無いと起こりゆるはずがなく生まれつきそうなるのはおかしいという。

紅木 炯人 あかき けいと

両親は、俺に物事をはっきりと見抜き、先を見据える炯眼を持った子になってほしいとこの名を付けたようだが、片眼が見えないんじゃあまり期待に答えられそうに無い。

事実先を読むのは苦手だ。

じゃんけんは弱いし、姉とテレビのサッカー中継でどっちのチームが勝つか予想し合うときも、大抵負けるのは僕が勝つと予想したチームだった。

俺には先を見据える力なんてない。絶対にそうだと確信していたが、それを揺るがせる出来事が起きた。

小5の春の事だった。まだ7歳の妹を連れての買い物の最中だった。真昼の店内で、近所に住むおばさんを見つけ、俺は何故か眼が離せなくなってしまった。決して惚れていたとかそんなんじゃない。だがその時、俺は自分の感情がわからなかった。そして妹がこう言ったのだ

「お兄ちゃん…?なんで…そんな悲しそうな眼で人を見てるの?」

なんでだろう…なんで…こんなに…悲しいんだ…?

「…なんでもないよ、さぁお菓子かって帰ろう。」

さっさと買い物を終えて家に帰った。一体何が起こったのか考えるうちに眠ってしまったのか、目が覚めると夕方だった。なんとなくテレビを付けると、チャンネルはニュースに定まっていた。

画面に映し出されている場所を見て、怪訝な顔をせずにはいられなかった。俺が住む地区の住民が昼行ったスーパーに行くには大抵通る道の傍、最近マンションの建設が始まっていた場所だった。右上の文字をみると

[白昼堂々鉄骨落下の惨事!!一般人1名死亡]

犠牲者として画面下に表示されていたのは、昼間スーパーで見たおばさんの顔だった。

死期を悟ってしまったのだろうか、それともただの偶然か。

偶然だ。そうに決まってる。

当時はそうやって自分を納得させた。

しかし、運命は僕にとって最も望まないカタチで、それが間違っていたと証明した。

それが起きたのは昨日の事。

姉と共に塾に妹を迎えに行った時だった。

突然の事だった。視界の中でいつも真っ暗だった部分に映像が映し出されたのだ。

それは、右眼から見える映像だと確信できた。

しかし、何かがおかしかった。右眼と左眼で映像がずれている。前を見て歩道を歩いているのに、右眼に写るのは、車道に向かった視界だった。

ひどく時間が進むのがゆっくりに感じられる

そしてその後右眼に映った光景に、俺は正しく眼を疑った。

道を挟んで反対側に妹がいた。俺たちを見つけたからか、何故か険しい顔をして妹はこちらに向かって駆け出し、その直後車に撥ねられた。

その瞬間右眼の視界は消え失せ、右眼に激痛が走った。思わず右眼を抑えるが、痛みは少しも引かない。

「炯人?炯人!?どうしたのちょっと、大丈夫!?」

姉の問いかけにも答えられないくらいひどい痛みだった。

「炯人?どうしたの!?」

「目が…ちょっと…」

やっとの思いで姉にそう答えると、右眼の痛みが少し引いた。今思えば、そのまま俯いていたかった。思わず涙目になった左眼で見えたのは

俺たちの様子を心配したのだろう。ついさっき右眼で見えたのと同じ。道路に駆け出す妹の姿だった。



もし自分の眼が何か特殊だったら、と、昔からよく考えていました。自分が昔得たかった能力をもしその時得られていたならどうなったのか。そういう心情で書いてみました。

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